第1回検討会議(議事要旨)

令和元年度第1回発達障害に係る教員や支援者の専門性の在り方等に関する検討会議(議事要旨)

期日 令和元年7月20日(土)午前9時30分から正午まで
会場 TKP新橋汐留ビジネスセンター
委員 本田委員、小倉委員、水谷委員(日戸委員代理)、光真坊委員、西村委員、粟野委員
  ◎花熊委員、西尾委員、山下委員、伊藤委員、熊本委員 (欠席)山中委員

※◎は委員長

1.説明
文部科学省:施策説明
国立特別支援教育総合研究所:事業説明
厚生労働省:施策説明
国立障害者リハビリテーションセンター:事業説明


2.協議
「支援人材の専門性に関する現状と課題」について各委員からの発言


【委員】本県では、かかりつけ医・ある程度の診断や治療ができる医師・専門的に診断可能な医師の3階層で医師の人材養成に取り組んでいる。また、多職種の連絡会議や研修会に人材を派遣し、連携体制を強化する取組も行っている。発達障害の研修は各領域で充実してきているが、連携の在り方や保護者支援が抜けやすい。保護者への啓発、メンタルヘルスの研修やその保障が必要。福祉ではある程度行われているが、教育では進めにくい部分もある。保護者に対する体制は意識して作っていく必要がある。教育と医療、福祉の間にはスタートラインの違いがある。医療や福祉は個別のアセスメントから始まるが、教育は個別から始まらない。文化的な違いを克服する必要がある。ユニバーサルデザインや合理的配慮の枠組みだけでは対応できない指導や支援について、すべての職種の人が共通理解しているかというとそうではない。全職種合同で学ぶ場を作る必要がある。児童発達支援事業所や放課後等デイサービスは増えているが、枠組みはできていても専門性の研修は手薄である。

 

【委員】「子どものこころ診療ネットワーク事業」では、地域でのネットワークづくり、診断できる医療機関の確保、研修会等の実施、「発達障害専門機関ネットワーク構築事業」では、人材育成として医師だけでなく他の職種にも研修を実施している。乳幼児健診に関する研究班では、パーソナルヘルスレコード(個人の健康情報)を国のデータとして活用する動きや、医師の診察項目の標準化の動きがある。また、乳幼児健診の大きな役割として育児支援も大きな課題であり、その指導方法と医師のスクリーニング方法も課題である。スクリーニング対象としては、疾病よりも状態としての発達障害をとらえることが重要。発達障害や知的障害という大きな括りの中でスクリーニングをかけ福祉支援に繋げる形にするよう提案した。乳幼児健診によりスクリーニングの精度は上がったが、療育の場、教育へのつなぎの課題がある。診断前支援の場が不十分ではという不安が各地域の母子保健の中にある。母子保健の情報が学校保健にどう結びついていくのか、そこが途絶えている。就学前の手厚い支援と情報が就学の段階で一旦ゼロになってしまう。保護者支援も含め、母子保健と学校とのつながりをこのプロジェクトで検討してほしい。乳幼児健診の場では、カンファレンスを多職種で行っている。学校でそれをどういうふうに作っていくのか、新しいことを始めると負担もかかる。話をしたけれど実際にはできない、というようにならないよう検討を進めてほしい。社会的な自立について教育の中でもぜひ取り上げてもらいたい。境界領域でもあと一押しすればタックスペイヤーになれる人がいる。重複障害の子どもの環境要因で発達特性をもってしまう場合もある。教育と福祉の連携の中でそういうことも語ってもらいたい。

 

【委員】教育、医療、福祉が集まる会議では、具体的な役割分担や個人情報の扱いなどそれぞれの領域で考え方が違う現実があり、なかなか意見が噛み合ない。福祉機関同士でも地域の実情による違いもある。そのような違いを超えていけるような連携が考えられたらよい。連携の第一歩として、各地域の自治体において分野や職種を超えて共通研修を受ける場を作ることが大切である。そうすることで、自然とネットワークができ、お互いの相互理解が深まる。特に基礎研修の部分は、地域で職種や分野を超えての研修を検討してほしい。

 

【委員】児童発達支援センター、放課後等デイサービス共に急増している。H30年度の障害者福祉計画の義務化により、児童発達支援センターが各地域に整備され、更に増加が見込まれることから、人材確保が急務になっている。支援員の資格は保育士及び児童指導員が基本的な職種になっている。児童指導員は、福祉、教育、心理系の大学卒業と2年間の児童福祉事業経験者だが、放課後等デイサービスについては未経験・無資格の人も担当している。H29年度には放課後等デイサービスで57件、児童発達支援事業所で2件の施設内虐待の報告も出ている。支援員の質の向上は急務である。人材育成の課題として、障害児支援に関わる職員、支援員の養成・研修システムがないということが挙げられる。保育士や子育て支援員については養成・研修システムがあるが、障害児支援については養成・研修システムがない。また、入職、配置後の育成支援システムは指定基準で規定されているが内容は事業所の任意になっている。更に職員の人材育成を担う児童発達管理責任者の質もバラバラで、発達支援については知らないというケースもある。それぞれの職能団体でさまざまな研修が行われているが、体系化されていない。障害者支援や児童発達支援事業所、放課後等デイサービスについて、ガイドラインは示されているが教育分野のような学習指導要領があるわけではなく、それぞれ独自に行っている。体系的に発達障害者支援センターが児童発達支援センターや児童発達支援事業所と結びつくと、より支援が充実する。コーディネーター、マネージャーなど似たような職種が多いので整理が必要である。

 

【委員】就労支援では、本人支援と企業支援の視点が重要である。企業のアセスメントとして、職場の中にどういう課題があるのか、どのような働き方が可能性としてあるのか企業文化を考える必要がある。発達障害者支援センターでは、障害者雇用ではなく一般就労の方も多い。昨年度の新規ケースでは、来所相談ケースの3割が公務員、医療や福祉従事者であり、特別支援教育の対象外であった人たちである。若年者でも働く場面になった時に課題が生じてくるケースが相当数ある。周りの従業員との関係も難しい。一方的な配慮や支援では機能しない。他者がどう見ているのかということに対する気づきが難しく、周囲も不満に思っている。気づきのない人に対して、どこがサポートしていくのかがはっきりしていない。大人になってから支援が必要になるという場合、教育の中での課題と就労場面で生じる課題とのズレをどう埋め合わせするかという検討が必要である。

 

【委員】同一環境内や移行期のような環境が変わる時点、例えば、学校から就労の段階での情報の伝達の難しさ、情報の質の確保をどうしていくのかが課題である。企業で行う情報伝達の保障、情報伝達の方法について、ぜひ参考にしてもらいたい。就労してからも職業を転々とするケースも多い。ハローワークでは、次の就労に関わる時に、前の職場を辞めてから来てほしいといわれるが、準備段階を長く必要とするため難しい。転職に関する準備段階のサポートができるような体制が望まれる。

 

【委員】教育センターでは、18歳までの生徒を対象に相談、研修の企画運営を行っている。相談の80%近くが発達障害関係である。最近では、ネット、スマホ依存や睡眠問題の相談も増えている。相談者の90%が通常の学級に在籍している。特別支援教育に関する研修を15講座行っている。顕在化しにくい発達障害、読み書き、吃音、不登校、特別支援学級、通級による指導、途切れない支援、担任だけで抱え込まないための支援、福祉等との支援会議の持ち方などがある。多忙のため働き方改革が急務で、教材作り、授業づくりの時間の確保なども重要になる。専門職と言われる人の正しい知識と理解が必要である。人権感覚に優れていること、想像力を働かせながらの傾聴、相手を分かろうとする姿勢など相談場面を想定しての演習に力を入れている。周りの子どもへの支援の力、臨機応変に指導方法を変える力も重要である。自立に関する考え方を通常の学級の先生と共有することも大切にしている。周囲の子どもへの理解教育も必要である。連携協働やチーム会議のためにはファシリテーターの力、他の専門職から学ぼうとする姿勢も必要である。

 

【委員】発達障害通級指導教室担当11年。直接支援、通常の学級の支援、保護者支援の3つを大事にしている。アセスメントとして、子どもを見立てる力、子どもが何に困っているかが大切である。通常の学級担任は、発達障害=ASDをイメージする先生が多い。知的障害とLDを混同している先生もいる。コーディネートとして、学級と保護者とのつながり、放課後等デイサービスとのつながりも大切である。お互いを理解することを進めたい。作業療法士と連携した支援を進めている。社会の状況を捉えることも重要である。教員としての資質として、自ら学ぶ研修の場や事例研究が大切である。発達のことだけでなく、一人ひとりの子どもについてみんなで考えていく事例研究などが必要である。

 

【委員】中学校通級指導教室担当12年。担任をした時の子どもたちが中学生の母になっている。連携の難しさについて相談される。乳幼児からの情報が就学でゼロに戻る。学校同士よりも関係機関との連携が難しい。発達障害者支援センターに行くと、厚労省の管轄なので、できることとできないことがあるといわれる。管轄の違い、職種の違いがネックになっている。医療との連携については、通常の学級担任に話しても分かってもらえない。医療との連携の難しさについては、医療費の問題、教師の多忙感などの課題もある。子どもの指導時間を割いてまで出向いて行くことが難しい部分もある。本市のブロック研修会を担当している。作業療法士から教室でできる支援を学んでいる。放課後等デイサービスとのつながりも出てきた。相互理解が必要である。診断のない生徒もたくさんいる。集団として見ていかなければいけない部分もある。

 

【委員】今年度から高等学校で通級による指導を開始した。3名の生徒に教員2~3名で対応している。5年間かけて準備をしてきた。始めてみて感じることは、教育課程の問題が大きいことである。専門性では、高校は特別支援学校の免許をもっている人も少ないので、ハードルの高い部分もある。通級担当の専門性も大事だが、学校の教員全体が特別支援教育の視点をもつことがもっと大切である。通級を受ける生徒は志があるので特に問題はない。小中で適切な支援を受けてきた生徒は高校では特に問題にならないこともある。いわゆるグレーといわれてきた生徒が、高校に上がってきていろいろな問題を起こすことがある。いろいろな分野と協力していかないと高校で特別支援教育を進めるのは難しい。縦の連携では中学校の情報はあがってくるようになったが、小学校からの情報はあがってこない。独自に入手している。横の連携では福祉関係の連携もある。オールラウンドにやっていかないと高校での特別支援教育は進められない。他の先生方へ働きかけ、理解者を増やす。様々なアプローチをしていかなければいけない。本県では高校通級は9校で始まっている。学校同士が連携して広めている。県内のすべての高校で通級ができるような教育課程になってほしいという声がある。

 

【委員】特総研、国リハで行っている研修は体系的であるが、地域で行っている研修は、単発的なものが多い。1回1回は充実しているが、視点が定着していかない。通級担当者における履修証明など、あるレベルにおける体系化をどう図るか。「連携」という言葉は、抽象的に使われている。具体的にどう連携していくのか、学校の先生方には見えていない。多職種が集まっての研修、事例の検討が今後必要である。将来を見越してのイメージをどれだけもてるか。成人してから、苦労している人のことを考えると、将来の自立に向けて何をしておかないといけないのか、そういう研修をしていかないといけない。通級担当者の専門性を高める通級の免許状のようなものも検討する必要がある。

 

【文部科学省】連携の曖昧さはある。文科、厚労も具体的な取り組みを通じて一緒になにができるかを検討している。具体的な取り組みを通じて考えることが大事、そういう意味でこのような場は大事である。研修については、特に通常の学級にいろいろな子どもがいる中で先生方にどう理解してもらうか。文部科学省でも大きなテーマとして取り上げていく。免許状、履修証明など、どういった形が子どもにとっていいのか、そのベースになるのがここでの議論と思っている。