不注意な間違いが多いのですが・・・

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具体的なつまずきの例

中学1年のてつや君は、ケアレスミスが多いとよく指摘されます。

そこで、先生はアセスメント(子どもの様子をじっくりと見て、どんなことがこのつまずきに関連しているかを考えること)をしてみました。

テストでは、正答を出しているにもかかわらず解答欄に写し間違えたり、位取りを間違えたりするうっかりミスが多かったり、実力が点数に表れません。また、授業中に黒板を視写する(ノートを取る)場合、行をとばしてしまったり、どの部分なのか見失ってしまったりします。 

ここで行われたアセスメントのポイント!

  • 認知の問題、特に、視知覚に問題はないか調べる。視覚の「運動」に問題があり、ねらいどおりのところに視点が移動しないということが考えられる。もしそのような問題があれば、読む作業でも「行の飛ばし読み」等があるはずである
  • 順番を待てない・出し抜けに答えてしまう・ほかの人をさえぎったり、邪魔したりする等の衝動性の高い行動があるかどうか確認する。てつや君のような状態を示す子は、LDを併せ有する可能性も考えられる。LDとADHDを併せ有するケースは 少なくないため、行動面だけではなく、LDに関する部分も丁寧に実態をみていく必要がある
推測できるつまずきの要因
  • いろいろな刺激に影響を受けやすい
  • たくさんの刺激の中から、必要なものを選択することが難しい
  • 視知覚、特に、協応運動に問題がある
  • 少しの情報で判断してしまうなど、衝動性が高い
  • 自分の行動を振り返ることが苦手である

指導編

具体的な指導・支援の例

アセスメントに基づいて、担任の先生は、次のような指導を行ってみました。

  1. どのような作業でも、終わったら必ず確認することを習慣づける。
  2. 問題用紙を拡大する。または、1枚に1題の問題用紙を準備する。
  3. ノートを取るとき、レーザーポイントを準備する。

行った指導・支援の意味

どのような作業でも、終わったら必ず確認することを習慣づける

自分の行動を振り返り、見直すことが重要です。Aはなかなか身につかないところかもしれませんが、根気強く取り組むことが大切です。

 

問題用紙を拡大する。または、1枚に1題の問題用紙を準備する

1枚の問題用紙には、たくさんの文字や記号などが詰め込まれています。それらの中から必要な情報を選択することが難しいと考えられますから、なるべく整理した形で提示する必要があります。Bのように、拡大したり、1題に1枚の問題用紙を用意したりすることによって、ほかの刺激から影響を受けることも少なくなりケアレスミスが少なくなることもあります。また、薄い罫線の入った用紙を用意することによって、位取りのミスをなくした例もあります。このように答案用紙を工夫することによって、刺激を調整することはとても有効な方法です。

 

ノートを取るとき、レーザーポイントを準備する

ノートを取るときは、I)黒板を見て、II)視線をノートに移し、III)書く、IV)視線をノートから黒板に移し、V)記憶し、VI)また視線をノートに移すという作業を繰り返すわけですが、てつや君は、IVのときに、黒板のどの部分なのか分からなくなるという状態でした。そのためCのように机上にレーザー・ポインターを用意し、黒板の赤い点を目印にしたわけです。
 この方法は大変有効でした。しかし実際に導入するまでは、学校側といろいろ話し合ったことも事実です。ポインターがいたずらに使われることから、学校では持ち込み禁止の指導をしていたのです。ほかの子どもに禁止しているものを、てつや君にだけ許すことは難しいということでした。その後、てつや君の実態から、この方法は有効かつ、必要なものであるということが理解され導入されました。

 


てつや君のような状態だと、ノートを取るという作業をやらなくなってしまうことが多いようです。てつや君の頑張りを評価するとともに、ノートを取らずにいる子どもの中には、てつや君のようなつまずきをもっている子どもがいるかもしれないということを考える必要があります。 

【文責:花輪 敏男】