パニックを起こすのですが・・・

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具体的なつまずきの例

 ふみこさんは極端に不得意な教科がある一方で、英語が得意です。しかし親しい友人はなく、職員室や相談室に出入りしています。
 そこで、先生はアセスメント(子どもの様子をじっくりと見て、どんなことがこのつまずきに関連しているかを考えること)をしてみました。

 そのふみこさんが先生の薦めで英語弁論大会に出場することになりました。クラスの仲間が談笑している脇でスピーチの練習を行うふみこさんを、普段から快く思っていない数人が非難し始めました。するとふみこさんは大声で叫びながら校庭へ走り出てしまいました。ふみこさんはパニックになると、生徒手帳を川へ投げ捨てたり、大切な英語の辞書や参考書を破り捨てたりすること等もあります。

 

ここで行われたアセスメントのポイント!

  • 本人や仲間からパニックになる状況について情報を集め、本人の気持ちを理解する
推測できるつまずきの要因
  • 感情のコントロールが難しい
  • 自己肯定感が乏しい
  • 周囲の人の言動に過敏である
  • 仲間の気持ちを思いやることが難しい

指導編

具体的な指導・支援の例

アセスメントに基づいて、担任の先生は、次のような指導を行ってみました。

  1. パニックをおこしたことについて叱責しないで、保健室や相談室に行って一人で静かに休ませる
  2. 授業を抜け出した場合は、気持ちが落ち着いたら教室に戻るように約束する
  3. パニックを起こした状況について、その場に居合わせた仲間や先生から情報を得る
  4. 本人が落ち着いていると判断できる状況で、パニックのきっかけになったできごとを先生と一緒に振り返る機会を設ける
  5. 本人の感じている悔しさを理解する努力をするとともに、本人には仲間の気持ちについても一緒に考えてもらう
  6. クラスの仲間には、周囲の言動からパニックになりやすいことを本人の特徴として説明する

 

行った指導・支援の意味

パニックをおこしたことについて叱責しないで、保健室や相談室に行って一人で静かに休ませる
授業を抜け出した場合は、気持ちが落ち着いたら教室に戻るように約束する

パニックを起こした場合は、Aのように本人の気持ちが静まることを優先するとともに、Bのように落ち着いたら教室に戻り授業に参加することで、自分の力でパニックから立ち直れたという自己肯定感を育む一助になることが期待できます。

パニックを起こした状況について、その場に居合わせた仲間や先生から情報を得る
本人が落ち着いていると判断できる状況で、パニックのきっかけになったできごとを先生と一緒に振り返る機会を設ける
本人の感じている悔しさを理解する努力をするとともに、本人には仲間の気持ちについても一緒に考えてもらう

パニックの原因が本人と周囲との関係にある場合は、Cのように状況を教師がまず理解することで、DやEの指導につなげていくことができます。

クラスの仲間には、周囲の言動からパニックになりやすいことを本人の特徴として説明する

本人の努力をつちかうとともに、Fのようにして、本人の対人関係における特徴について理解が得られることで、周囲の仲間がいじめないように配慮することができます。

【文責:大柴 文枝】