中学校段階

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【52】発達障害を対象とする通級による指導の充実のために

段階
小学校段階
中学校段階
カテゴリ
支援体制に関すること

平成23年度専門研究D
「発達障害を対象とする通級指導教室における支援の充実に向けた実際的研究」より 

 キーワード:発達障害、通級による指導、運営マニュアル 

 


【PDF版】


 【この研究では】
 平成18年4月の学校教育法施行規則の一部を改正により、通級による指導の対象は、自閉症と情緒障害が分けられるとともに、LD、ADHDが新たな対象となりました。特別支援教育の推進とともに、LD、ADHD、自閉症等の発達障害のある子どもへの教育的支援に向けた一つの方策として、学校のリソースとしての「通級指導教室」が果たす役割が大きくなってきています。しかし、通常の学級に在籍し、通級指導教室で定期的に指導を受ける児童生徒にとって、通級指導教室での指導が通常の学級での指導にどのように活かされているのかについては、担当者の指導力に委ねられているのが現状です。通級指導教室での指導は、通常の学級へ連続性を持ち、円滑な連携のもとで活かされることが期待されます。そのためには、教師の専門性や通級指導教室や通常の学級の運営などの諸条件が整っていることが前提となります。
 本研究では、発達障害のある児童生徒を対象とする通級指導教室における通常の学級との連携及び指導の連続性を考慮した取り組み状況、教室運営の状況等についての現状と課題を整理しました。そして、自立活動や教科の補充指導の展開、教材・教具の選定、通常の学級への指導の連続性を図るための工夫等についての具体的な実践事例から、発達障害を対象とする通級指導教室の基本的なマニュアルを試案として作成することを目的としています。


【研究をして見えてきたこと】
 平成22年度にLD、ADHD、自閉症、情緒障害を対象とする通級指導教室を設置している全国の小中学校約1800校から、420校を抽出し、実施した調査結果をもとに以下の点について整理を行いました。
 ・教育課程や指導計画を立案する際の留意点
 ・個別指導や小集団指導等の指導形態を選択する根拠
 ・自立活動と教科の補充指導の位置づけ
 ・教科の補充指導を実施する際の課題
 ・通常の学級における指導へつなぐ工夫等
また、先進的な取組をしている通級担当者から、通級指導教室の運営について情報収集を行いました。
 ・指導開始、指導の終了のシステム
 ・通級指導教室の年間活動計画
 ・通常の学級や保護者との連携
 ・専門家や関係機関との連携
通級担当者が考える指導上の課題は、①「実態把握」、②「指導目標の設定」、③「指導内容・方法の選定」、④「指導時間の設定」、⑤「指導の評価」の順で重要と示されました。また、指導目標や内容、指導時間の
確保に関しては、通常の学級担任との連携が不可欠であることも挙げられました。連携を図るために、担任者会の開催や連絡ノートの活用は、多くの通級指導教室で行われていますが、話し合いの場や時間の確保が課題となっています。
工夫している通級指導教室では、年間指導計画にきちんと位置づけ、在籍校(学級)の担任にもはじめから計画に入れてもらうようにしていました。通級による指導は個別指導を中心としていますが、「個別指導と小集団指導を併用している」が、「個別指導のみ」とほぼ同じ割合でした。発達障害のある児童生徒の指導では、対人関係やコミュニケーション等の社会性に関する指導も重要視されています。自立活動と教科の補充指導については小中学校、ともに、「自立活動と教科の補充指導をともに行っている」が半数を超えていました。特に中学校では、「教科の補充指導」の割合が高くなることがわかりました。教科学習のつまずきが適応状態に大きく影響する中学校では、「教科の補充指導」のウエイトが大きくなると思われす。通級担当者の教科の保有免許や教科担任との連携が重要課題となります。在籍校(学級)との連携で実施が多いものは、「在籍校の校内委員会や事例検討会に参加」、「教材・教具や参考図書の情報提供」、「通級児童生徒以外の子どもの教育相談等の実施」が挙げられました。

 

【研究に関する情報】
通級による指導の実施状況(平成23年度)

【研究組織】
 (研究代表者) 大城政之(研究分担者) 笹森洋樹

 

【研究課題名】
発達障害を対象とする通級指導教室における支援の充実に向けた実際的研究−「発達障害を対象とした通級指導教室の基本的な運営マニュアル(試案)」の作成に向けて− (平成23年度)
 

【本研究紹介シートの文責】

  笹森 洋樹

 

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。