位置や空間を把握することが苦手なのですが・・・
具体的なつまずきの例
ゆうと君は、グラフの目盛りや表の欄を目でおって読み取ることが難しく、読み間違いをよくします。また、特別教室への移動のときにも、遠回りをしたり、間違った方向に行こうとしたりして、友だちから声をかけられることがしばしばあります。
そこで、先生はアセスメント(子どもの様子をじっくりと見て、どんなことがこのつまずきに関連しているかを考えること)をしてみました。
担任の先生は、ゆうと君の図画工作や体育の授業での様子も気をつけて観察しました。すると、ソフトボールでは、打ってから3塁に走って行きそうになっている様子がみられました。
ここで行われたアセスメントのポイント!
- 教室移動の場面だけでなく、図画工作や体育の授業での様子も観察する
- 自分の身体を中心に左右、上下、前後などの理解ができているかどうかを確認する
推測できるつまずきの要因
- 空間関係(自分自身の身体の真中・左右・上下を知覚したり、身体の部分的な動きを知覚すること)の把握が難しい
- 視運動的な認知力(外界での左右・上下・前後・遠近・接離などを知覚すること)が弱い
- 空間や時間を表すことばを理解することが難しい
指導編
具体的な指導・支援の例
アセスメントに基づいて、担任の先生は、次のような指導を行ってみました。
- 移動の際には、友だちと一緒に移動させる
- 特別教室に行くまでの廊下の間の曲がり角には目印になるようなものを置く
- 移動先の特別教室の名称と共に曲がり角の目印もあわせて伝える
担任の先生が行った指導の意味
移動の際には、友だちと一緒に移動させる
方向感覚に困難がある子どもは、慣れた場所でも、いつもと違う地点からスタートするときには、自分のいる位置がよく分からず、どちらに行ってよいのか迷ってしまうことがあります。Aのように、友だちとともに行動することで、このとまどいをなくすことができます。
特別教室に行くまでの廊下の間の曲がり角には目印になるようなものを置く
校舎内では同じような教室が並んでいるので、区別がつきにくかったり、曲がる場所が分かりにくかったりします。Bのように掲示や案内図やインテリアなどを置いて、方向や自分がいる位置が分かるようにすることが大切です。掲示や案内図やインテリアの設置は、ほかの場所との区別を明確にする意味でも効果的です。
移動先の特別教室の名称と共に曲がり角の目印もあわせて伝える
Cのように、移動先の教室名だけでなく、途中の目印となるものや場所をことばで伝えることで、移動先までのルートが確認でき、とまどうことが少なくなります。視空間認知に弱さがあると、図形の特徴を捉えるのが困難であったり、線や点を目で追って位置関係を理解するグラフの理解が難しかったり、衣類の前後を間違えて着たり、教室移動でまごついたりします。目印を示したり、身体を使って方向を確認したりすることが大切です。上記のほかにも、先生は次のような工夫ができます。
移動する道順を一緒に歩きながら、手がかりとなるものを示したり、その場で「右に曲がる」「階段を上る」などの位置や方向を示すことばを伝えたりして覚えさせる
校内の図で、自分の教室の位置や特別教室の位置を確認させる
【文責:海津 亜希子】