学校現場におけるコロナ対策の工夫など
このコーナーでは、横須賀市立の小学校、中学校、高等学校からの「コロナ禍における自閉症等発達障害のある児童生徒の学校生活に関するアンケート」への回答をもとに作成したエピソードをご紹介します。子どもたちとともに、関係者が連携・協力して未曾有の事態を乗り越えていくための一助となれば幸いです。
自粛期間中や活動再開後の学校の様子
家庭学習を十分に行えなかったり、それまでの学習内容をすっかり忘れてしまったりした。
⇒電話で励ましたりわからないことを教えたりした。
⇒学校再開後、丁寧に個別指導を行った。
新年度の子どもの現状や家庭の様子の把握、保護者との関係づくりが十分にできなかった。
⇒学校再開後、保護者と校内職員とで丁寧に情報共有を行った。
具体物を使って一緒に考えることで学びやすい子どもが多いが、休校中の学習ではプリントでの学習が多くなってしまった。
⇒迷路や塗り絵、線つなぎ等、子どもが興味を持って取り組めるようなプリントも用意した。
家庭での生活リズムの管理や学校からの課題対応に追われたり、困惑したりしている様子が伺えた。
⇒家庭での学習課題はできるところまでで構わないと伝えたり、なるべく負担のかからない課題を出したりした。
⇒課題についてどこまでできたらOKとするか、保護者と相談をした。ハードルを下げることで、落ち着いて取り組み、達成感を持つことができた様子だった。
生活リズムを整えるのが難しいことがあった。
インターネット中心の生活になってしまった。
⇒保護者に連絡して、本人と話をし、寝る時間と起きる時間の2つの約束をした。意識をしているがまだ遅刻をしてしまう日もある。
⇒日々の生活の記録表を準備して、生活の振り返りを行えるようにした。
⇒休校中もデイサービスの利用により、規則正しい生活ができ、人とのかかわりがあった。
生活リズムを整えることで手一杯で、課題に着手できないケースがあった。
⇒課題配布の際に家庭での様子を確認し、課題の分量や内容を調節したり、保護者の困っていること、苦労などを丁寧に聞くようにしたりした。
本人も保護者も学校に来られず課題を渡せなかった。
⇒自宅のポストに届けた。保護者と電話やメールで連絡を取り合った。
学校を再開する際、教室の密度、学習の遅れの不安、共有する物の消毒、給食開始への不安を抱えている子どもがいた。
新型コロナウィルスに感染することに対して保護者の不安も大きかった。
⇒学校での感染症対策を本人と保護者に伝えたり、手指消毒剤等を持参できるようにしたりした。
適切な距離感(ソーシャルディスタンス)を伝えることが難しく、距離を保って行動させることが難しかった。
⇒教室や廊下に色テープを貼り、待機する場所がわかるようにした。
⇒昇降口などテープを貼ることができないところでは、「3人になったら進む」などのように、子どもがわかることばで指示をした。
休みが長かったため、学校のリズムへの切り替えが難しい子どもがいた。コロナを必要以上に怖がる様子もあった。
⇒こまめに声かけを行ったり、子どもの話をよく聞いてあげたり、子どもの気持ちに寄り添って、不安な気持ちが少しでも取り除けるようにした。
新しい学年や新しい担任への不安が大きく、腹痛などの症状を訴える子どもがいた。
⇒SCによるカウンセリングを実施したり、ケース会議を行ったりした。
⇒保健室から徐々に教室に行けるように支援した。
教師がマスクをすることで話が伝わりにくいことがあった。
⇒マスクとマウスシールドなどを場面に合わせて使い分けるようにした。
口元が見えることでことばが伝わりやすく、表情も伝わりやすいので、子どももマウスシールドなどの方がよいと言っている。
生活様式が変わったことで、子どもたちが落ち着かなくなったり、無気力になったりする様子があった。
⇒わかっていることは早めに説明し、書くなどして視覚的にも示して納得させながら進めた。日がたつにつれて新しい生活スタイルに適応していく様子がみられた。
触覚過敏のため、マスクをしているのが辛かったり、外してしまうと周囲に指摘されてイライラしたりする様子があった。
⇒パーテーションを使用し、距離をとれば、マスクを外してもよいことにした。
だんだん慣れてきて、マスクをしても大丈夫になった。
マスクの着用を嫌がり、他の子どもたちから注意されてしまった。
⇒注意は子どもではなく、担任がするということを確認した。他の子どもたちにも、気分が悪いときなどはマスクを無理につけなくてもよいことを伝えた。
落ち着かない、集中して取り組めないという自分にイライラしてしまう子どももいた。外遊びなどが制限され、体を十分に動かせないことでのイライラもあった。
⇒空き時間の教員やふれあい相談員、養護教諭等が個別に対応して、教室以外の居場所を作ったり、違う課題を行ったり、話を聞いたりするなどして支援した。
⇒パニックになった時には、本人の気持ちが落ち着くまで、話を聞いて「大丈夫だよ」と声掛けをし、クールダウンの時間をとるようにした。
子ども同士のコミュニケーションが難しく、クラス作りに難しさを感じた。
給食をみんなと一緒に食べられなくなった。そのため、午前中だけ出席して早退するようになった。
⇒保護者と相談し、お弁当をお昼に持って来てもらった。保護者と一緒に別の場所で食べるようにして、午後の授業にも出られるようになった。
⇒新しい生活様式について道徳の授業を中心に指導し、ロールプレイを取り入れて具体的な内容が定着するように工夫した。手洗いソングも活用したので歌いながら楽しそうに手洗いする子どもがいた。
コロナ禍において思いがけずよかったこと
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隔日分散登校期間は、教員数は変わらず子どもの数が半分だったので、子どもへの指導が行き届きやすかった。
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分散登校が不安だったが、人数が少ない中で子どもたちは落ち着いて学習できた。
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ハンカチやティッシュなどの持ち物がそろうようになった。
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1日おきの登校や短縮授業、分散登校などの緩やかなスタートで、教室に入れなかった子どもも他の子どもと一緒に授業を受けることができた。
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保護者が、学校や先生方のありがたさを実感した、と伝えてくれた。
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子どもと保護者が今まで以上に、日常生活全般にわたって向き合うことができた。
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行事等が減り、ルーティーンで行動でき、子どもの行動に落ち着きがみられるようになった。
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通常であれば子ども同士の体が接触して喧嘩が起こることがあるが、ソーシャルディスタンスをとることで、子ども同士のトラブルが減った。
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休校中に家庭内で体力づくりを進めていた子どもの集中力があがった。
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手洗いの習慣がつき、衛生面に気を付ける姿がみられる。
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授業時間が短くなったり、行事が無くなったりしたことで子どもたちのための教材研究や授業準備の時間ができた。
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定期的に課題を出したが、それによって家庭学習の習慣がついた子どもがいた。
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行事や集会がなく通常通りの予定と学習が続き、支援級の子どもは比較的安定して過ごすことができた。
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例年通りの運動会ではなく学年ごとで行った。観客が少なくてのびのびと活動できた。練習と近い環境で自閉症のある子どもがよく取り組めていた。
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休校期間中、校内の支援体制に向けて話し合う時間を十分に持つことができ、保護者との関係作りや子ども理解につながった。
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課題の受け取り時など、保護者と直接話す機会が多くあり、相互理解が深まった。
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家族と過ごす時間が増えて、家族との会話が増えた。
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不要不急について考え、実践することで、子どもにも教職員にも余裕ができた。
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休み時間に集団ではなく個別に過ごすようになって、落ち着いて過ごせるようになった子どもがいた。
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グループでの活動はできにくくなったが、静かな環境で集中して学習に取り組めるようになった。
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子ども全員が「手洗いをする」「列に並ぶ」という行動をするので、声をかけなくても集団の流れの中でそれらをすることができるようになった。
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当たり前の日常を振り返ることができ、子どもたちが学校へ来ることの楽しさを感じている。
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感染症対策を行っているためか、風邪で欠席する子どもが減った。
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家庭での時間が増えて、興味のあることに取り組んだり、普段できないことができたり、家族との絆を深めたりしていた。家庭でのことを嬉しそうに話す子どもの姿もあった。
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保護者同士が連絡を取り合ったり、心配事を学校に相談してくれたりした。
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周りの子どもが手伝ってあげられない状況だったので、自然と自分のことは自分でやるという意識が芽生えて、実践できた。