指示に従えず、また仕事を最後までやりとげないのですが・・・
具体的なつまずきの例
中学1年のしゅん君は、いつも掃除などをまじめにやらないので、先生から注意を受けることが多いです。
そこで、先生はアセスメント(子どもの様子をじっくりと見て、どんなことがこのつまずきに関連しているかを考えること)をしてみました。
「まじめにやりなさい」「ちゃんと掃除をしなさい」などと言われても、ほうきを持ったままふらふらしています。
ここで行われたアセスメントのポイント!
- 指示を聞いていないということも十分考えられるため、指示を聞いているかどうかを確かめる
- うなずいたりするために理解しているものと思ってしまうことがある。しかし、意外に分かっていない場合があるため、指示が具体的に何をさしているかを理解しているかどうか確認する
推測できるつまずきの要因
- 指示の具体的内容を理解していない
- やり方が分からない
- 集中できる時間が短い
指導編
具体的な指導・支援の例
アセスメントに基づいて、担任の先生は、次のような指導を行ってみました。
- 1回で一つの指示をするようにする
「これとこれをやってから、次にこれを」のように1回でいくつかの指示を一緒にしてしまうと、どれか一つに反応したり、結果的にはどの指示も理解できなかったりすることが分かりました。 - 指示を具体的にする
「まじめにやりなさい」「ちゃんと掃除をしなさい」という表現を「この階段を掃いて」「ここからここまでの場所をモップで拭いて」「ゴミを捨ててきて」というような具体的な行動を示すようにしました
しゅん君のような状態ですと、指示に従わない、自分勝手な子どもだ、不真面目だ、いつもサボっているという評価を受けてしまいますが、実は、指示の具体的な内容について分かっていなかったということがよくあります。
行った指導・支援の意味
1回で一つの指示をするようにする
Aのように、指示は、1回で一つが原則です。1回に複数の指示では、どれか一つだけに反応したり、混乱してどれにも反応しなかったりしてしまいます。ですから「ちゃんと着替えて、脱いだものは片づけなさい」という指示では、脱ぎっぱなしになってしまうのです。原則からいえば、「着替えなさい」そして「片づけなさい」という指示になりますが、いちいちこの状態では面倒です。「ハンガーに制服をかけなさい」という指示ですと一度で済みます。このように効率のよい指示を工夫しながら、本人に分かりやすいものにしていかなくてはなりません。
指示を具体的にする
指示は具体的でなければなりません。私たちが何気なく使っている表現は、意外と抽象的である場合が多いものです。「まじめにやる」「ちゃんとする」「迷惑をかけない」「頑張る」などは、具体的な行動とは結びつきにくいといえるかもしれません。「片づける」ということを、具体的にどうすることなのか分からなかった子どもがいます。Bのように「本を本棚に入れよう」「机の上のものを全部この箱に入れよう」と言ってあげた方が、その子どもには分かりやすいのです。いずれにしてもその子どもに分かる表現で伝えていかなくてはならないということです。
【文責:花輪 敏男】