第2回検討会議(議事要旨)

令和元年度第2回発達障害に係る教員や支援者の専門性の在り方等に関する検討会議(議事要旨)

期日 令和元年12月4日(水)午前10時から午後1時まで
会場 一橋大学一橋講堂 2階 中会議場1
委員 小倉委員、日戸委員、光真坊委員、西村委員、粟野委員 (欠席)本田委員
  ◎花熊委員、西尾委員、山下委員、伊藤委員、熊本委員  (欠席)山中委員

※◎は委員長

1.協議

〇協議事項1 「B指導・支援」の「特性に応じた指導・支援」について
【司会】:「特性に応じた指導・支援」については、この項目名でよいか。また、主な内容について、事務局から支援の内容別に整理したいことが提案されているが、障害名を出した方がいいか、具体的な技法名を出し方がいいかなど、整理の柱をどう考えたらいいかについて意見をききたい。
【事務局】:当初、具体的な技法名が並べられていたが、研修の講義名にする場合には、包括的な項目名としてまとめていきたいと考えている。
【委員】:それぞれの研修のコマをどのぐらいのボリュームにするのかによって違ってくる。大まかに全体的な内容を取り扱うというのであれば、提案どおりでいい。指導・支援の中で、具体的にこれをおさえてほしいというものがあるのなら、もっと細かく示していくことも考えられる。前提として、研修のコマのボリュームはどう考えているのか。
【事務局】:議論している過程であるが、一講座45分程度、最大でも90分程度の枠を想定している。「B指導・支援」はかなり重要な中身であるので、6つの項目を挙げているが、全部研修として取り挙げるかどうかは、これから検討しなければいけない。ただ、それぞれの講座については、45分若しくは90分程度くらいの単位の中で一つずつ扱うようなイメージである。ある内容について3時間も4時間もということではなく、教員も福祉の方も一回完結型で最大90分程度で収まるような内容を考えている。
【司会】:資料3の研修コアカリキュラムの指標に初級、中級、上級とあるが、例えばどこまで細かくやるか、どれだけの項目を立てるか、ということについてはどのように考えているか。また、各項目で初級から上級の指標を示すのか。
【事務局】:指標は、各講座において、経験値に応じて三段階の指標を書きたいと思っており、イメージ案を見ていただいている。各項目で初級から上級を想定している。
【文部科学省】:指標は、結果をどう図るかというものであって、初級から上級によって研修の内容を変えるということではないと理解している
【委員】:初級から上級のイメージがわかりにくい。教育では、イメージしやすいが(例えば、通常学級担任、通級担当、Co等のそれぞれの立場)、福祉ではどうイメージすればいいのか。そのようなイメージが示されないと、項目の主な内容も具体的なところを考え難い。
【事務局】:福祉としての結論はでていないが、国リハでは検討を進めている。今回の専門性に関していえば、教育関係者は福祉のことがある程度わかり、福祉関係者も教育のことがわかるということが期待される。今回の検討は教育中心で進んでいるが、福祉のサイドでも示していく必要がある。連携に関しては、初級は、初めて福祉の分野にきて、そこの業務がこなせるというレベル、中級は、教育と連携する必要が生じた時に、ケースワークでやりとりできるレベル、上級は、例えば虐待などの難しいケースにおいて、スーパーバイズしたり、地域の自立支援協議会に参加したり運営したりできるレベルというイメージをもっている。
【司会】:まず、「対人援助、支援・療育技法」を、12月4日版のように「特性に応じた指導・支援」という形で共通の部分にまとめるということについて、皆様から承認いただいたということで決定したい。次に、主な内容をどう設定するか。事務局からの提案以外に、他の考え方はあるか(特性や技法を柱にした整理など)。
【委員】:社会モデルで考えると支援の内容(ニーズ)で示すのが適切だと思う。
【委員】:発達障害者支援法では、特性に応じた支援が打ち出されているので、特性に応じた支援の在り方をおさえておく必要がある。
【司会】:特性という言葉をどう捉えるか。子どもの困難さで考えるのか、診断名で考えるのか。
【委員】:必ずしも診断名が必要と言っているわけではなく、個々人がもっている困難さが重要だと考えている。そういう意味での「特性」をきちんと示していく必要があると思う。
【委員】:ASDやLDについては、最近の脳科学などの研究で分かっていることも多くある。診断名にこだわる必要はないが、ある程度、障害種別に応じた特性の視点も必要ではないか。
【委員】:そういう意味での「特性」については、「A基礎知識」の「発達障害の障害特性と理解」でおさえてあるので、「B指導・支援」では、違う切り口で考えるのはどうか。
【委員】:医療分野では、併存疾患(例えば、ASDやADHD)が多いことがわかっている。診断名として併存疾患も記述できるようになった。その点も踏まえて、今起こっている事象に対しての関わり方をどうするかという書き方の方が適切ではないかと思う。
【司会】:これまでの議論を受け、ベースとしては領域別の書き方で作成し、コアカリキュラム等を作成する際に、特性の視点をなるべく落とし込んでいく形で同意いただきたい。

 

〇協議事項2 F権利擁護「障害者の権利に関する条約及び子どもの権利に関する条約」について 
【委員】:子どもに対して虐待が非常に多い。毎日のようにテレビで報道されているので、この権利に関することについては、共通として取り上げてほしい。
【文部科学省】:福祉分野で残っている成年後見については、教育でも大事ではないか。
【司会】:教育の世界は、成年後見制度が課題になっている等の情報に疎い面があるが、障害者や子どもの権利に関係するところでもあるので、共通の基礎知識として考えてはどうか。
【委員】:教育においても、福祉等いろいろな分野のことを知っていないといけない。しかし、教員の多くは教育のことしか知らない。将来的に、子どもが自立していく時にどんな制度があって、どんな権利やサービスがあるかなどについて、最低限必要な、基礎的なことだけでもいいので、教員として身に付けておきたい。
【事務局】:親権をどうするかという視点もおさえておく必要がある。虐待のときにも深く関わる。
【委員】:民法の話も重要となる。権利を保障する上で重要なので、そこをどう扱うかが重要となる。権利擁護の中で、基礎的なことは網羅することが大事ではないか。
【司会】:このような制度があるなど、基本知識を知っておくという段階から、実際にそれを運用するという段階まで幅がある。項目(名)としては、事務局の提案どおりに設定して、その中で、基礎的知識の他、実際のケースにおいて重要になること(虐待に対する親権のことや未成年後見のことなど)を、含めていくということでどうか。

 

〇協議事項3 C「家族支援」と「保護者の相談支援」について
【委員】:名称は議論が必要だと思うが、保護者は2つの顔をもっている。一つは、教員や支援者と一緒に、子どもの発達を支援する顔、もう一つは、支援を必要とする顔である。ここを混同しない方がいいと思う。
【委員】:現実に親の会の中では、母親が多く、男性(父親)は、ほとんどいない。母親がかなり追い詰められて入ってくる場合が多い。お互いに話しをしていく(または聞いてもらう)なかで、心がやわらいでいく。親として支援していくことも大事だが、一人の人間として支援していくという視点も必要である。
【厚生労働省】:保護者だと療育ではなく「子育て」になると思うので、「子育て」と「療育」を整理して表現した方が良い。
【司会】:教育では、保護者と考えてしまって、家族のところまで目配りがいっていないということがある。教育の立場から、家族についてどのように捉えていったらいいか。
【委員】:きょうだいに障害のことを伝えたり、自分の人生をどうするかということを考えたりといった、きょうだい支援も大事である。教育においても、家族への介入が必要な場面があるのではないか。
【委員】:ペアレントトレーニングをやっているが、参加する人は、母親、祖母が中心であり、父親や他の家族にどう広げていくかが課題となっている。教育の枠組みの限界はあるが、子どもの家庭環境への介入の視点も大事だと思う。
【委員】:集団として考えると、保護者よりも家族の方が大きい。共通の方で、家族全体を考えた方が良いと思う。また、家族への介入と保護者支援という用語の使い方の整理が必要である。
【文部科学省】:学校に保護者への介入の機能があるかといわれると、法的にはそうはいえない。家族支援の基本的な考え方、支援者であり、被支援者であること、きょうだいのことなど、を共通のところで少し触れることができないか。また、「障害受容」ではなく、「子どもの障害の特性の理解」、などの表現にしてもらえないか。
【委員】:家族の機能評価がないと、介入にはつながらない。どのように評価するかということも、共有して知っておくことが大事だと思う。
【委員】:きょうだいが一緒に在籍する可能性が最も高い小学校での支援が大事だと思う。
【委員】:障害受容に関しては、受容できるものではないという意見も多い。その言葉の使い方については、もう一回検討する必要があるのではないか。
【委員】:きょうだい支援はすごく大事である。療育については、子育てと切り離されるものではない。介入という言葉は、違う意味にもとられかねないのではないか。
【委員】:介入という言葉はあまり適切とはいえないかもしれない。ただ意図するところはわかるので、用語については適当なものを事務局の方で考えてもらいたい。
【司会】:保護者には被支援者・支援者としての両面があること、およびきょうだい支援については共通した問題、虐待防止にも関係する要因でもある。家族の機能評価のダイナミクスも大事である。こうした意見を踏まえ、事務局に対して、共通の項目を「保護者・家族支援」とし、その主な内容として、子どもの年齢段階による支援、きょうだいの問題、評価機能などを入れることを提案する。

 

〇協議事項4 D「多職種連携」「事例検討会議」「災害対策」について
【委員】:教育関係者は、就労の支援機関に対するイメージはあまりもっていない。誤った情報提供をすることによって、かえってわかりにくくなることもあるので、きちんと情報が浸透するようにしっかり知ってもらいたい。就労は福祉的就労も一般就労も含む就労、就業は基本的には障害者雇用も含めた企業等への就業、として分けて使っているので、用語の統一が必要である。
【委員】:連携は大事だとキーワードのようにいわれるが、実際はほとんどできていないのが実情で、特に難しいのが就労である。通常学級にいるので、就労という言葉に抵抗があり、就業の方がイメージをもちやすい。どこと連携していったかを考えると福祉が多かった。
【委員】:私の県の研修講座では、医療も福祉も労働もあるが、その時は、学んだ気になっているが、きちんと身に付いているかはわからない。用語の問題もあるように感じる。
【委員】:個別の指導計画、支援計画にどう盛り込んでいくのかという話かと思う。ここでいう多職種連携では、その前段階での連携は大事というぐらいにしかならないのではないか。
【委員】:高等学校では、一般には、就職という言葉を使う。就労は福祉的な意味あいが強い。福祉的な就労を希望する場合、診断が必要になる。教育では、多職種連携という言葉はほとんど聞かれない。果たしてその項目名でいいのか。
【委員】:一人の子どもを見ていくときに、いろいろな立場の方が支援に関わって、途切れのない支援につなげていってもらいたい。障害をもっていて一般就労してしまった子どもたちは、ほとんど支援を受けられていない現実がある。そういう子どもたちにも支援が受けられるようなことを考えてもらいたい。
【委員】:連携には縦と横がある。時系列の移行支援と現時点で関わる機関同士の協働支援という考え方である。連携を考える場合、その2つをしっかりおさえた方が良い。教育での連携イメージは、外部機関とのつながり、例えばOT(作業療法士)やPT(理学療法士)とどうつながっているといったことに焦点があてられている。しかし、多職種連携というのは、少し違う。多職種連携と他機関連携の使い方の整理が必要である。事例検討会は個別支援会議と言っているので、用語の使い方についても検討してほしい。災害については、避難所では発達障害への配慮は足りないと言われているので、そのような内容も取り入れてもらいたい。
【委員】:災害対策について、家族の中でも話し合いがされていない。家族の中の問題でもある。先ほどのCの家族支援の中にも入ってくるのではないか。
【文部科学省】:各機関の強み弱み(役割なども)も示してほしい。内容の中に、例えば、心理は入れなくていいのか。多職種連携は今回の肝になるが、シラバスの最初のところで、他の項目との関係などを説明してはどうか。例えば、Bの支援計画の作成と活用とのつながりなど。
【委員】:連携の意義を示すのか、連携事例を含めるのか、それによっても内容が違ってくる。それぞれの役割とか意義があって、連携があるので、本来の連携とか協働はどういうものかの説明があったうえで、内容について説明していくのがよい。
【委員】:教員はなんでもやりたがる。担任は、全部をやることが美化される。本来であれば福祉に任せることまで、担任が無理してやってしまう。それぞれの機関の強みや役割分担を共通の部分でおさえてもらいたい。
【司会】:多職種連携と事例検討会議を分けた方がいいと当初は思っていたが、これまでの議論で、具体的なケースを抜きにしての多職種連携はあり得ないと感じた。今すぐに適切な言葉は思いつかないが、教育が福祉、医療、労働と関係をもつというのが主な目的であることを、まずは示したい。具体的な機関や役割についての知識や、連携の理念が具体例の上で展開されるという形で、「多職種連携」と「事例検討会議」を一つにまとめた方が適切だと考えた。
【委員】:自分の専門分野だけで完結しないように、抱えこまないようにしてそれぞれの専門家との連携を行うという視点で、「他の分野との連携」という言葉ではどうか。
【司会】:「多職種連携」と「事例検討会議」は一つの項目にまとめ、共通の中に重点項目として入れる。多職種連携の用語については、(本来意図していることとは)違ったイメージで捉えられてしまう可能性もあるので、「他の分野との連携」等、事務局で再考する。内容的には、連携に加えて、支援計画との位置づけと具体例を盛り込む。
【委員】:災害対策について、本県では道路が寸断されてしまって、送迎サービスを使っている人は大丈夫だったが、自立通所していた人たちは動けなくなってしまったということがあった。また、その時、そうした人たちの居場所作りをする必要性があった。それぞれの地域の事例などがあると参考になる。
【事務局】:防災に関しては、内閣府で議論が進んでいるが、一方で、災害時要援護者支援が進んでいないという実情がある。だれが講師をするか。主体は、当事者、自治体、避難所になる学校、社会福祉法人など、が考えられる。要援護者の支援計画は個別に作るので、どこに、どう逃げるのか、それを事前に決めていこうとする動きはある。実際には、支援計画を作っていくなかでスペシャリストが出てくると思う。そういう人がそれぞれの地域で育ってくれればと思う。
【委員】:学校に行けなくなるなど、災害後のフォローが大事といったケースがあった。フォローのことについても内容にいれてほしい。
【文部科学省】:項目にするのはどうなのか。90分講義を考えたときにできるのか。それぞれの地域で、何ができるだろうという話になってしまうのではないか。連携の下にあることで、こういうことも考えてくださいねというレベルにしたらどうか。地域で、障害のある子どもをどう守るかという観点があって、その一つに防災があるという方がまとまりが出るのではないか。
【司会】:地域でニーズが違う。緊迫度も違う。それが一番の本務ではないこともある。だれが講義できるのかということもある。新しい項目としてあげてもらったが、独立項目にするよりは、どこかの中で、おそらく連携の部分で取り上げるということで良いのではないか。

 

〇協議事項5 「発達支援及び子ども子育て支援」の新設について
【委員】:マイナス1歳から、子どもがお腹にいる時から支援をしていただきたいと考える。
放課後等デイサービスについては、現実問題として、月曜~日曜まで全部利用しているという子どももいる。保護者支援ということになるのかもしれないが、頼りきっているがゆえに、そこに頼れない時期になったときに、問題にもなる。そのような観点も取り入れてもらいたい。
【委員】:妊娠期からの支援というのが保健領域では始まりつつある。子育て世代包括支援センターも、来年度くらいまでには全国に配置する予定になっている。生まれていないお子さんに対して支援するというと福祉領域はなかなか手が入りにくい部分なので、保健でカバーしつつ、上手く情報をつないでいくというところを是非盛り込んでもらいたい。
【委員】:父子家庭(フルタイムになると遅い時間まで働いている)をどこが支援をするのかがはっきりしていない。この部分にも触れてもらいたい。
【委員】:発達支援については、児童発達支援が位置づけられていて、サービスの具体だけでなく、理念等も含めてきちんと検討してほしい。保育園、幼稚園、認定子ども園の中での発達支援の方向性についても、おさえておく必要がある。
【文部科学省】:就学前のことを入れるのは賛成である。項目、用語については再検討してほしい。分野が重複しているので、少し切り分けも必要である。
【司会】:幼児期のことについては全ての方が知っておいた方がよい。学校関係の人も知っておいた方がいいと思う。新設するということで了解いただきたい。幼児期の発達支援が基本になるが、放課後児童クラブ、ひとり親支援など、他の項目と重なる部分もあるので、事務局で整理してほしい。

 

〇その他 「ライフキャリア」のイメージについて
【委員】:ライフキャリアはどういうイメージか。
【事務局】:キャリア教育では、キャリア発達が基本となるが、ワークキャリアとライフキャリアの視点があり、ライフの方は生き方、例えば余暇、など広く含んでいる。
【委員】:ワークに関するキャリアが問題になっているが、ワークの中だけでなく、生活にも深く関わっている、特に発達障害の子どもはその認識が重要である。
【司会】:ワークキャリアの方が基本的には大きな概念で、一生涯に渡って自分の役割を果たす、そしてその役割を果たすことで人生を充実していく、というのが基本である。学習スキルだけでなく、生活スキルというのも大事になってくる。ワークキャリアも大事だが、ライフキャリアという用語が入っていることは適切だと思う。
【文部科学省】:「キャリア教育、進路指導」にも、就労(就業)支援とのつながりが大事であることのリンクが必要である。
【委員】:教育の分野では、「B指導・支援」の部分のボリュームが多い。福祉の分野でも、発達支援の部分や、支援計画も取り上げて、同じようなボリューム感にする方が分かりやすいのではないか。