発達障害者支援関係報告会

 平成28年2月1日(月曜日)に厚生労働省において、「発達障害者支援関係報告会」が開催されました。本事業では、乳幼児期から成人(青年)期における発達障害児・者の支援体制の整備・強化に向けて、医療・福祉・労働・教育の関係機関の連携による取組について報告がなされました。

  • 日時・会場
    平成28年2月1日(月曜日) 午後1時~午後5時
    会場:厚生労働省 講堂

  • 参加者
    都道府県・指定都市及び市町村教育委員会担当者、福祉部局担当者

  • プログラム
    1.文部科学省行政説明 「特別支援教育行政の現状と課題について」
    2.厚生労働省行政説明 「発達障害者支援施策、発達障害者支援法 等」
    3.事例報告(前半)
     ①大阪府「乳幼児期における早期発見についての取組」
      〔発表者〕
        大阪府福祉部障がい福祉室地域生活支援課参事  奥村 健志氏
      〔概要〕
     大阪府では、「大阪府発達障がい児者支援プラン」にもとづき、発達障がいの早期発見・早期発達支援に向けた、総合支援事業についての報告がなされました。
     具体的には、「発達障がいの早期発見のための問診項目」の策定と導入支援、発達障害の気づきを促すためのツールとしてのゲイズファインダー(注視点検出装置)の活用、発達支援体制の充実、各ライフステージにおける支援の充実等について報告がなされました。

     ②大館市「発達障害の可能性のある子どもたちへの早期からの総合的な支援~大館市が取り組む“どこでも支援教育・だれでも支援教育”」
      〔発表者〕
        大館市教育研究所所長  山本 多鶴子氏
      〔概要〕
     大館市では、すべての子どもの自立と社会参加を目指して、「大館市子ども・家族支援ネットワーク」から始まった関係機関が一体となった支援体制についての報告がなされました。
     具体的には、継続した支援を行うための「サポートシート」(0~28才まで)、早期からの気づきや支援のための「満5歳すてっぷ相談」、就学前の特別支援体制についての報告がなされました。また、教育研究所によるサポート体制(例:「全教職員のための特別支援教育ハンドブック」作成や特別支援教育情報センターの機能充実等)の整備についても報告がなされました。

    4.事例報告(後半)
     ③富山県「高等学校におけるキャリア教育・就労支援事業の取組」
      〔発表者〕
        富山県教育委員会県立学校課特別支援教育班長  荻布 知寿子氏
      〔概要〕
     富山県では、「キャリア教育・就労支援事業」について、全県域をモデル地域にし、東部と西部に2分した各地域に高等特別支援学校をモデル校として置き、特別支援教育における就労支援の拠点校に位置づけています。平成25年4月に開校した拠点校(2校)を中心とした社会的・職業的自立に向けた支援の取組について報告がなされました。
     具体的には、「富山高等支援学校」及び「高岡高等支援学校」において、企業等での就業において必要な知識・技能等の基礎を習得させるための取組や「特別支援学校就労コーディネーター」の配置、高等特別支援学校と高等学校が連携した取組について報告がなされました。

     ④滋賀県「学校卒業前後における青年期の福祉的支援」
      〔発表者〕
        社会福祉法人グロー びわ湖ワークス・ジョブカレ  金子 知美氏
        社会福祉法人しが夢翔会                 小﨑 大陽氏
      〔概要〕
     滋賀県では、7つの福祉圏域を設定して障害者福祉施策を推進しています。発達障害のある人が地域で安心した生活が送れるよう、身近な地域での相談支援を受けることができる体制の整備や、暮らし、働き、活動するために必要な支援の充実にむけた取組についての報告がなされました。
     具体的には、「発達障害者自立生活支援プログラム普及事業」や「高校・大学を対象とした発達障害早期支援モデル事業」について報告がなされました。

     ⑤札幌市「発達障害特性を背景にもつ不適応行動への支援」
      〔発表者〕
        社会福祉法人はるにれの里 発達支援室なっつ  俵谷 知実氏
      〔概要〕
     札幌市では、発達障がい特性を背景としてもつ社会的ひきこもりや家庭内暴力等、成人期における不適応行動への支援にむけた取組についての報告がなされました。
     具体的には、CRAFT(Community Reinforcement and Family Training)の考え方を取り入れ、環境調整を適切に行うことにより、適応的な行動を増やし、本人や家族を支える仕組みの実践や専門家を養成する研修事業等について報告がなされました。

    5.グループディスカッション 「各地域ごとの発達障害者支援体制の強化」

  • 主催
     厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課
     文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
    <報告会に参加して>
     本報告会では、各自治体の特性を生かして、各関係機関が連携・協働して発達障害児・者への支援に向けて、地域全体で総合的に取り組んでいる様子が報告されました。
      早期発見及び早期支援、各ライフステージにおける支援の充実、2次的障害への対応やその予防等の取組により、本人はもとより家族を支えることになり、共生社会の形成に向けて、地域全体の支援の仕組みを整えることが重要であると思われました。また、こうした取組により、多様性を認め合える意識が醸成されると感じられました。
      また、「障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン」も資料として配布されましたが、これは教育関係機関においても、大変参考となる資料と思われます。

(発達障害教育情報センター 江田、岡本)