【5】特殊教育諸学校(特別支援学校)の専門性を発揮するために
キーワード: センター的機能、特別支援学校、リソース機能 |
平成8年の中央教育審議会答申や平成11年度改正の学習指導要領の内容をふまえて、「盲・聾・養 護学校」においてセンター的機能を果たすことが提起されることになった経緯と背景を含め、センター的機能をどのような内容としてとらえたよいのかについて検討しました。
全国の盲・聾・養護学校でのセンター的機能の実施状況、諸外国での学校のリソース機能、大学の教育養成におけるセンター的機能に関する取扱等の調査や研究から盲・聾・養護学校が地域における支援機能を発揮するために必要な観点を整理し、センター的機能を実施していくための要点と課題を取りまとめました。
具体事例として、特色ある取り組みをしている学校での実践及び県単位での取り組みを紹介し、その開発経過とそれぞれの特色や課題点について整理しました。
本研究は、「センター的機能」が本格的に実施される以前の先駆的研究として位置づけられます。
本研究では、これまで政策的に提案されてきた内容や国内外での実践事例などを手がかりに特殊教育諸学校の「センター的機能」の内容について検討しました。その結果、その機能を以下に示す7つに整理して提案しました。
- 「教育相談」機能
- 「指導」機能
- 「コンサルテーション」機能
- 「研修」機能
- 「授業改善」機能
- 「情報提供」機能
- 「施設・設備提供」機能
これらの成果は、中央教育審議会関連の委員会に報告され、その後もセンター的機能の内容検討の基礎資料として活用されてきました。平成17年12月答申「特別支援教育を推進するための制度の在り方について」のセンター的機能の具体的内容の記述にも本研究の成果が反映されています。
さまざまな審議を経て、現在、この内容は概ね次の6つの機能に整理されています。
- 小・中学校等の教員への支援機能
- 特別支援教育等に関する相談・情報提供機能
- 障害のある幼児児童生徒への指導・支援機能
- 福祉、医療、労働などの関係機関等との連絡・調整機能
- 小・中学校等の教員に対する研修協力機能
- 障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能
この「センター的機能」は、現在では特別支援学校の重要な機能の一つとして位置づけられています。
今後、特別支援学校には、センター的機能の充実がますます求められてくることになります。
この機能を発揮するためには、特別支援学校の豊かな資源と教員の高い専門性が不可欠なことはいうまでもありません。
さらに広く特別支援教育の充実を図っていくためには、特別支援学校は小・中学校等との十分な連携をとり小・中学校自身の教育力が高まっていくように「センター的機能」を発揮していく必要があります。
本研究の成果は 「特殊教育諸学校の地域におけるセンター的機能に関する開発的研究」プロジェクト研究報告書として公表しています。
本報告書は《総説編》《事例編》《資料編》の3部構成になっています。
《総説編》においては、センター的機能が提案されることになった経緯や背景、平成13年度時点での全国の盲・聾・養護学校の実施の実態、諸外国における盲・聾・養護学校等のリソースセンター機能、教員養成大学での対応などを取りまとめ、盲・聾・養護学校がセンター的機能を開発・実施していくための要点及び課題を整理するとともにいくつかの提案をとりあげました。
《事例編》では、研究協力機関及び2つの県における「センター的機能」の開発的取り組みを紹介しました。
《資料編》では、全国で行われている特色ある「センター的機能」の取り組み事例、研究協力機関における調査結果、研究協力機関の概要などの資料を取り上げました。
滝坂信一、大内 進、大柴文枝、佐藤克敏、牟田口辰己、徳永亜希雄、横尾 俊、涌井 恵
特殊教育諸学校の地域におけるセンター的機能に関する開発的研究(平成13年度~平成15年度)
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
- http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-47.html
- http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-48.html
- http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-49.html
大内 進
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。