【6】LDの状態像を捉えるためのアセスメント
「学習障害の判断に必要となる心理教育的アセスメントに関する研究(平成16年3月)」より
キーワード: LD(学習障害)、アセスメント、判断 |
【この研究では】
これまで、我が国においては、LDの定義にみられる「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった基礎学力やそのつまずきを測定したり、評価したりすることのできる標準化された検査法がないという状況にありました。
しかし、LDのある子どもへの支援を考えていく際、どこに子どものニーズがあるのか、つまり、特異な学習のつまずきの状態を把握することが、まずは重要になってきます。
そこで、指導にあたる教員や校内委員会、あるいは専門家チームで使用できる評価方法の開発が急務であると考え、この研究に着手しました。
研究で作成した調査用紙の一部
【研究をして見えてきたこと】
この研究では、LDの判断を受けている子どもの群(83例)、LDの疑いがあると指導者が評価する子どもの群(146例)、LDではないかと考えられる子どもの群(609例)の3つのグループの評点について比較しました。その結果、主に以下のことが明らかになりました。
- LDのある子どもとそうでない子どもとの間には、全ての学習領域、行動・社会性領域で明らかな差がみられた。
- 子どもの全ての領域の状態をプロフィールにすることで、落ち込みのある領域の確認と、領域間の差の検討を行い、最終的にLDの可能性の有無を総合的に評価する方法が妥当であるとの判断に至った。
- 実際の子どもの様子と比較すると、指導中の子どもの様子や、認知能力検査の結果と、本研究の調査票との結果がよく関連していた。しかし、指導経験が少ない評定者の場合、妥当性が低い(子どもの本来の状態像をチェックできていない)可能性があることが示されたため、活用する際には、場面と状況を検討する必要がある
【研究に関する情報】
この研究での知見を活かし、平成17年には、『LDI-LD判定のための調査票』(日本文化科学社)として出版され、現在、学校や相談機関等で広く利用されるようになっています。
(LDIについての情報は、日本文化科学社のホームページ http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/ldi.html まで )。
本研究においては、対象が小学生に限られていましたが、近日、改定されるLDIでは、中学生を対象とした項目が新たに付加され、より幅広い年齢層の子どもの支援につなげていくことが可能となりました。
【研究組織】
篁 倫子・ 海津亜希子
【研究課題名】
学習障害の判断に必要となる心理教育的アセスメントに関する研究(平成13~15年度)
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-185.pdf
【本研究紹介シートの文責】
海津 亜希子
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。