【31】発達障害のある子どもを、早期から総合的に支援するために
「発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システムに関する研究(平成20年3月)」より
キーワード: 発達障害、早期からの支援、地域支援システム、グランドデザイン |
【この研究では】
LD、ADHD、自閉症等の発達障害については早期からの生涯にわたる総合的な支援が重要です。そして、早期発見・早期支援を具体化することは発達障害者支援法に規定された国の責務でもあります。これに対応するために、早期発見・早期支援を中心に、文部科学省関係機関・厚生労働省関係機関が一体となった総合的システム構築の在り方に関しての研究を行いました。
【研究をして見えてきたこと】
本研究では、就学前の早期支援が、図1に示したようにその後の発達支援の基盤になるものと考えて研究を進めました。上記の研究活動から得られた結果を要約すると、以下のようになります。
- フィンランド、米国、英国では、早期から支援されている子どもの割合が高い。
発達障害の確定診断は、3歳以降になることが多く、5歳以降になる場合もありますが、これらの国では確定診断がなされる前でも支援の対象としています。(例:米国における「発達の遅れ:developmental delay」) - 我が国の特別支援学校や、いわゆる幼児のことばの教室において、発達障害のある幼児への支援が積極的に取り組まれてきています。しかし、支援を受けているのは両者を合わせても全幼児の0.2%です。
- 発達障害のある可能性について、適切な研修を受けた幼稚園・保育所においては早期から気づかれています。
- 地域事例における取り組みの主なものは、以下の通りです。
- 関連部署や機関を統括する部門の設置
- 子ども行政の一元化
- 法定健診の充実や5歳頃の健診の追加
- 幼稚園・保育所への支援
- 幼児を対象とした通級指導教室の設置
- 子どもの情報を一元的に記録するファイルの作成と活用
図1 早期から生涯にわたる発達支援の概念図(湖南市の資料から一部改変して使用)
【研究に関する情報】
本プロジェクト研究の成果として、長期的に国や地方自治体が目指す到達点を検討し、「発達障害グランドデザイン<Ver.1早期における支援を中心に>としてまとめました。これは、要配慮児(発達障害児や発達障害の可能性があり配慮・支援が必要な子ども)への早期からの総合的な支援システムを構築する際に、地方自治体等で活用されることを期待して作成したものです。以下の7つの項目からなっています。
- 総括・調整(責任ある組織のもとに、一貫性のある効率的で利便性の高い行政サービスが、一人一人のニーズに応じて提供されるために)
- 就学前の発見と支援(保護者が安心できる、子どもの発達段階に応じた適切な支援を受け、成長を促すことができるために)
- 就学後の発見と支援(早期の支援を生かし、学校において適切な支援が行われ、社会的自立ができるために)
- 教育環境整備(個々のニーズに応じた教育的支援を可能にし、子どもたちが安心して、お互いを支え合う学校生活を送ることができるために)
- 切れ目のない連携(生涯にわたり一貫性のある支援をいつでもどこでも受けることができるために)
- 保護者支援(保護者の思いや願いに寄り添い、安心して子育てができるように)
- 社会基盤の充実(発達障害を理解し、社会全体で支え、共に生きるために)
発達障害を理解し、社会全体で支え、共に生きるために
図2 発達障害支援グランドデザイン
【研究組織】
渥美義賢(研究代表者)、大柴文枝、海津亜希子、久保山茂樹、後上鐵夫、小林倫代、笹森洋樹、澤田真弓、玉木宗久、廣瀬由美子、藤井茂樹、棟方哲弥、斉藤由美子
【研究課題名】
発達障害のある子どもの早期からの総合的支援システムに関する研究(平成18~19年度)
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
- http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-67/c-67_all.pdf (こちらは中間報告です)
- http://www.nise.go.jp/PDF/GrandDesign.pdf(グランドデザインが掲載されています)
- http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-78_all.pdf
【本研究紹介シートの文責】
笹森洋樹
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。