当研究所の研究
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【13】自閉症教育の充実のために「今の充実と明日への展望」「より確かな指導の追究」
- 段階
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乳幼児期段階
小学校段階
中学校段階
後期中等教育段階以降 - カテゴリ
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子どもの特性、実態把握に関すること
指導法・支援方法に関すること
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「養護学校等における自閉症を併せ有する幼児児童生徒の特性に応じた教育的支援に関する研究(平成18年3月)」より
キーワード: 自閉症、知的障害養護学校、教育課程
【この研究では】
養護学校(現・特別支援学校)等では、障害のある幼児児童生徒個々のニーズに応じた教育的支援が行われています。近年、これらの学校に在籍する自閉症を併せ有する幼児児童生徒の割合が増加傾向にあります。このため、自閉症を併せ有する幼児児童生徒に対するよりよい教育的支援をするために、自閉症の特性に応じた指導内容や指導法の開発、学校・学級環境の整備が重要な課題となっています。本研究では、これまでの国内外の自閉症教育に関する研究成果を整理し、教育的支援に役立つガイドブックを作成するなど、指導内容、指導方法、環境整備の在り方について研究を進めました。研究タイトルの副題にあるように、知的障害養護学校における自閉症の特性に応じた指導内容、指導方法、環境整備を中心に検討しました。第1章では本研究の課題設定の経緯や3年間かけて行ってきた研究概要の経過について、第2章では今後の自閉症教育における課題と方向性を参加者と一緒に整理した「NISE自閉症教育実践セミナー」(平成17年実施)について、第3章では自閉症の特性に応じた教育課程の在り方について述べています。第3章は、研究協力校5校に依頼した教育課程についての調査結果と、 「NISE自閉症教育実践セミナー」のワークショップにて行った教育課程に関する協議内容結果に基づいて、検討しました。
【研究をして見えてきたこと】
「自閉症への対応は、知的障害教育で培ってきた実践をベースに、個別化をされに進めることでよいか」という問いに対して、我々が3年間の研究で到達した結論と残された課題は以下の通りです。
知的障害と自閉症を併せ有するということは、「知的発達の遅れを伴う自閉症」と捉えるべきで、「自閉を伴う知的障害児」という知的障害のバリエーションとして捉えて自閉症児に対応すべきでないというのが現在我々が到達した考え方です。知的障害養護学校でこれまで培われてきた実践と共通する部分や参考になる部分は多いと思われるが、自閉症の幼児児童生徒に対しては高い認知的能力を活用するための教科指導と、特異な困難さを改善するための自立活動の指導、未分化な発達段階を考慮して従来の知的障害養護学校で行われてきた生活体験重視の指導を同時並行的に行う必要があります。 本研究では、研究協力校における事例の分析から自閉症教育でキーポイントとなる指導内容を特定し、7つの力の試案を示しました。また、自立活動を核に各教科を生活的に扱う形態として「個人別の課題学習」(領域・教科を合わせた指導)を提案しました。これらの妥当性の検討や、自閉症の特性に応じた学校生活とは何か、特別な教育課程はどうあるべきか、教育環境をどう整えるべきか、指導法をどう活用するか、それらの在り方を検討することが次へ残された課題です。
【研究に関する情報】
■セミナー及び講習会他 (平成17年度研究成果)- NISE自閉症教育実践セミナー
全国3カ所で実施し、研究成果の普及と同時に、ワークショップを通した自閉症教育における課題と解決策の整理を行いました。 - 自閉症教育推進指導者講習会
当研究所と筑波大学附属久里浜養護学校(現・特別支援学校)が共同で企画・実施しました。本講習会は、自閉症教育推進の指導的立場にある者に対する研修として位置付け、基礎的な知識・技能を踏まえ、筑波大学附属久里浜養護学校における「授業の実践演習」など、より高度な内容について、演習、研究協議、講義を行いました。 - 関連する研究成果等
自閉症教育実践ガイドブック-今の充実と明日への展望-(平成15年度研究成果)
研究所がこれまで行ってきた研究や国内の学術雑誌等に掲載された研究論文などの新しい知見を整理し、この作業を通してこれまでの研究を可能な限り総括しながら、日々の自閉症教育の実践に役立てるガイドブックとして作成しました。 http://www.kyoikushinsha.co.jp/books/30.html
自閉症教育実践ケースブック-より確かな指導の追究(平成16年度研究成果)
自閉症教育の指針として刊行した自閉症ガイドブックを補完する資料として、作成しました。研究協力者との研究協議から浮かび上がった三点の喫緊の課題、研究協力校の19の実践事例、平成16年8月に全国の盲・聾・養護学校を対象に実施した自閉症教育のアンケート調査の概要についてまとめました。
http://www.kyoikushinsha.co.jp/books/49.html
■研究報告書 (平成17年度研究成果)
研究協力校を対象に、自閉症の特性に応じた指導内容や指導の形態に関する教育課程調査を実施し、自閉症のある児童生徒の教育課程について整理し、加えて全国3カ所で実施した「NISE 自閉症教育実践セミナー」のワークショップを通して自閉症教育における課題と解決策を整理しました。
【研究組織】
小塩允護・竹林地毅・木村宣孝・徳永豊・佐藤克敏・齊藤宇開・涌井恵・廣瀬由美子・是枝喜代治・西牧謙吾・花輪敏男・大杉成喜・東條吉邦・小澤至賢・内田俊行
【研究課題名】
「養護学校等における自閉症を併せ有する幼児児童生徒の特性に応じた教育的支援に関する研究」(平成15~17年度)
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_d/d-210.html
【本研究紹介シートの文責】
小澤至賢・涌井恵
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。 - NISE自閉症教育実践セミナー