当研究所の研究
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【30】聞いたことばを文章で書くとき、文字が抜け落ちることがありませんか。
- 段階
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小学校段階
中学校段階 - カテゴリ
- 子どもの特性、実態把握に関すること
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「通常の学級で学習する障害のある子どもの日本語の音韻・音節の認識に関する研究-書き言葉において間違えやすい日本語の特殊音節の特性の分析-(平成20年9月)」より
キーワード: 特殊音節、促音、拗音、拗長音
【この研究では】
学校教育の中では、児童生徒が教員の音声情報を聴き取り、それを頭の中で「書き言葉に」変換して、文章表記するという一連の学習活動の営みがあります。また、子どもは自分の頭の中で思考したものを、「書き言葉」として表現する活動も日常的に行われます。通常の学級に在籍し特別な教育的支援を必要とする発達障害児、あるいはその疑いがもたれる児童生徒の中には「書き言葉」の表記の際に、日本語の特殊音節と言われる促音や拗音などにおいて、誤りがおきることが学校現場では確認されることがあります。本研究では、研究の対象を、書き言葉において間違えやすい日本語の特殊音節に視点をあて、脳に届く「音声情報」と「書き言葉」の関係から、その音声情報の特性を調べ、なぜ「書き言葉」に誤りが起きるのか、その原因の一端を探りました。研究の中では、「書き言葉」としての表記の上で誤りやすいところに原因がないかというところに焦点を当て、促音・長音・拗長音の分析を行いました。促音は、具体的な音の情報が存在するのではなく、急激な息止めで、なおかつ音声の情報がない状態に対して表記する文字であることが分かりました。「つまる音」という表現がなされることがありますが、表記上の文字と実際に耳に届く音韻の聞こえ方とは異なる場合があることが分かりました。指導法に工夫が必要なことが分かってきました。
【研究をして見えてきたこと】
日本語のスペクトログラムを作成して検討を行った結果、考えられる原因を、整理しました。促音「っ」については、「つ」のように、音のONに対応した音韻では構成されておらず、「急激な息止めによる音のOFF」状態にもあるにもかかわらず、「っ」を表記するということが確認できました。聴覚印象は、視覚的な文字の大小である「つ・っ」という関係ではないということです。このことは、視覚情報の「○。○○」と聴覚印象を結びつけるときに、配慮が必要な点と思われます。
*「長音」「拗長音」の結果は報告書に掲載
促音の検討の結果
【研究に関する情報】
平成18年4月1日から、学習障害者及び注意欠陥多動性障害者が新たに「通級による指導」の対象に加わりました。このことに対して、文部科学省初等中等教育局特別支援教育課から、「就学指導資料」(補遺)が示されました。その中では、学習障害により困難を示す領域として、聞く能力、話す能力、読む能力、書く能力、計算する能力、推論する能力に困難を示す場合が指摘されています。そして、学習障害のある児童生徒の教育的対応方法の一つに、『文章や文字を音読する能力を高めるための指導』として次のような解説が行われました。音読が苦手な場合には、聴覚的処理(文字を音声等に変換すること)に困難がある場合と、視覚的処理(視覚的な情報をとらえること)に困難がある場合がある。聴覚的処理に困難がある場合には、「がっこう」を「○。○○」ととらえられるようにするなど、音を視覚的にとらえる指導を行う。また、視覚的処理に困難がある場合には、文字単位ではなく、そのまとまりである単語全体としてとらえるように指導を行う。
(平成18年7月 就学指導資料補遺 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課より引用)
【研究組織】
藤本裕人・藤井茂樹・西牧謙吾・海津亜希子
【研究課題名】
通常の学級で学習する障害のある子どもの日本語の音韻・音節の認識に関する研究-書き言葉において間違えやすい日本語の特殊音節の特性の分析- 研究(平成18~19年度)
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-229_all.pdf【本研究紹介シートの文責】
藤本裕人
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。