当研究所の研究
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【18】神経症・緘黙症等の情緒障害のある子どもの支援のために
- 段階
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小学校段階
中学校段階
後期中等教育段階以降 - カテゴリ
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子どもの特性、実態把握に関すること
指導法・支援方法に関すること
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「神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害のある児童生徒への教育的支援に関する研究(平成18年3月)」より
キーワード: 教育的支援、神経症、緘黙症、精神病、脳の器質的障害
【この研究では】
従来は情緒障害特殊学級や情緒障害通級指導教室においては、自閉症を中心とする発達障害のある子どもやその他の情緒面に障害の表れる様々な障害のある子ども等、多様な障害のある子どもに対する教育的支援を行ってきていました。しかし近年では、より障害特性に応じた教育的支援を行うために、発達障害のある子どもへの教育的支援は情緒障害教育とは別個に行っていく方向性が示されています。平成18年3月の初等中等教育局長の通知により、自閉症者・学習障害者・注意欠陥多動性障害者に対する通級による指導が明確に分けられています。一方で、発達障害以外の情緒面に主な障害のある神経症・緘黙症、精神病、脳の器質的障害や、発達障害に通常は含められないことが多いものの発達障害と関連があり対応に大きな困難の伴う行為障害等についての教育的支援も、これまでと同様に重要な課題です。
本研究では、発達障害以外の多様な情緒障害に対する教育的支援の在り方を検討するため、その障害特性や教育的支援に関する研究報告を整理し、行為障害のある子どもへの教育的支援については事例を通した検討を行って報告しました。
【研究をして見えてきたこと】
神経症について、米国精神医学会の作成したDSM-IVの診断カテゴリーでみると、分離不安障害、選択性緘黙、反応性愛着障害、不安障害、身体表現性障害、解離性障害、摂食障害、適応障害等があります。多くのものは思秋期以降の発症が多く中学校以降で教育的支援が必要となることが多いのですが、分離不安障害、選択性緘黙、反応性愛着障害は幼少児期に発症することが多いものです。これらについては、まだ十分に支援ニーズの把握が行われておらず、教育的支援の方法についても、選択性緘黙以外については研究が進んでいないのが現状です。反応性愛着障害は、ネグレクトを含む広い意味での虐待と関係していることが多く、近年では幼児・児童への虐待が多く報告されるようになっていることから、今後の大きな課題の一つになっていく可能性があります。行為障害は、著明な反社会的な行動を特徴とする障害で、発達障害の一つである注意欠陥多動性障害と関連があるとされ、また反応性愛着障害とも関連があるとされているものです。知的発達に遅れがないことが多いので、通常の学級に在籍することが多く、その対応には非常に大きな困難を伴います。この行為障害のある子どもを相談学級で支援した事例から、行動改善のための支援方法を検討し、子どもの気持ちの受容とソーシャルスキルの段階的学習が一定の成果をあげる可能性があることが分かりました。
【研究に関する情報】
この研究の成果は、以下の報告書にまとめられています。
【研究組織】
渥美義賢・花輪敏男・大柴文恵・笹森洋樹・是枝喜代治・廣瀬由美子・玉木宗久
【研究課題名】
課題別研究:神経症・緘黙症・精神病・脳の器質的障害のある児童生徒への教育的支援に関する研究
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-208.html
【本研究紹介シートの文責】
渥美義賢
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。