当研究所の研究
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【42】幼稚園・保育所における「気になる子ども」への支援を考えるために
- 段階
- 乳幼児期段階
- カテゴリ
- 支援体制に関すること
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平成20年度 研究紀要 第36巻 「気になる子ども」「気になる保護者」についての保育者の意識と対応に関する調査―幼稚園・保育所への機関支援で踏まえるべき視点の提言-」より
キーワード:特別な支援、気になる子ども、気になる保護者、保育者の視点
【この論文では】
幼稚園や保育所の保育者の先生方は、「気になる子ども」という言葉で、保育上に何らかの課題がある子どもを表現することがあります。本論文では、保育者の先生方にとって「気になる子ども」とは、具体的にどのような子どもなのか等についてアンケート調査を行いました。併せて、「気になる保護者」ついても調査を実施しました。調査対象は、人口が40万人規模の都市にある全ての幼稚園と保育所、合計78か所の保育者としました。そのうち52か所(回収率66.7%)の幼稚園・保育所の585名の保育者の先生方から回答がありました。調査項目は以下の通りです。- 回答者の属性 (勤務する幼稚園・保育所、経験年数、年齢、勤務形態、担任学年と障害のある子どもの所属の有無、障害のある子どもの保育の経験)
- 「気になる子ども」について(「気になる子ども」とは、「気になる子ども」がいる場合の保育上課題、「気になる子ども」への試み、「気になる子ども」の保護者とのかかわりの課題、「気になる子ども」の保育にあたって、園にあれば良いと思うもの
- 保護者について( 保護者から受ける相談、「気になる保護者」とは)
- 専門機関などへの期待すること
- 保育について困ったことがあるときの相談相手
- 受けたい研修はどのような内容か
その結果、「気になる子ども」については、発達障害があると考えられる子どもから、虐待を受けている可能性のある子どもやアレルギーのある子どもまで、多岐にわたる回答が得られました(図1)。
また、「気になる子ども」がいる場合の保育上の課題については、「気になる子どもの行動面の課題」や「集団活動における課題」について多く回答されました。こうした課題に対して、現在行っている支援の実際については「個別のかかわり・声かけ」が半数以上を占めていました(図2)。
さらに、「気になる保護者」とはどのような保護者かについて尋ねたところ、「しつけやかかわり方が気になる」「子どもに対して無関心」「保育者の話が伝わらない」などの回答が得られました。
すべてのアンケート項目で、回答者の所属機関や受け持つ学級の学年により、回答傾向に差異が見られました。これらの結果を踏まえ、幼稚園、保育所等へ機関支援を行う者が留意すべき点について検討し、提言しました。図1 気になる子どもとは? 図2 気になる子どもに対している保育上の試み
【論文の中で,最も強調したい点】
本研究の結果から、幼稚園や保育所等に対して機関支援をする際、以下のことに留意する必要があると考えられました。
1.幼稚園、保育所等の多様性について
調査結果からは、「気になる子ども」についても「気になる保護者」についても、幼稚園と保育所とで、また、公立保育所と私立保育所とで保育者の捉え方は異なっていました。幼児の機関として同一に考えるのではなく、機関の属性によって差異があるものと捉えておく必要があると言えます。特に、「専門機関に期待すること」の結果からは、私立保育所の保育者が基本的な知識を得たいという回答傾向が顕著でした。このことから、特に私立保育所への支援を充実させていく必要があると考えられました。
2.子どもとかかわりについて
調査結果では「気になる子ども」について多岐にわたる回答があり、課題も多数あげられました。気になる子どもの気になる行動について改善していくことも重要でしょう。しかし、幼稚園や保育所には、遊びながら環境と主体的にかかわったり、子ども相互の影響力を活用したりして、子どもの発達を促す機能が元来備わっていると思われます。また、小田(2001))は、「幼児を幼児として、あるがままに受容する」ことが幼児のよさを見ていく出発点であると述べ、「子どもを一般的な固定化された累計像でとらえるのではなく、常に動的に変化していくものとして」とらえる目を持つことが求められると述べています。このように、「気になる子ども」への直接的支援以外にも、保育者の子どもを見つめる視点を拡げることや、周囲他児も含めた環境へのはたらきかけを提案することも重要な機関支援と言えるでしょう。
3.保護者への支援について
子どもと同様に、保護者に気になることがあると、その改善を求めがちです。しかし、久保山・小林(2000)が指摘するように、保護者が保育者(教師)に求めているのは、保護者の話を聞くことであり、その話を踏まえた対応です。幼稚園、保育所へ機関支援をする者は、保育者と共に考え、「気になる」ことへの対応をしつつ、しかし保育者が「気になること」ばかりに捕らわれない保育や保護者とのかかわりができるよう、支援していくことが求められていると考えられます。【執筆者】
久保山 茂樹(企画部) ・ 齊藤 由美子(教育研修情報部) ・ 西牧 謙吾(教育支援部)
當島 茂登(鎌倉女子大学) ・ 藤井 茂樹(教育相談部) ・ 滝川 国芳(教育研修情報部)【論文名】
「気になる子ども」「気になる保護者」についての保育者の意識と対応に関する調査
―幼稚園・保育所への機関支援で踏まえるべき視点の提言―【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
この論文は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-36/a-36_5.pdf【本研究紹介シートの文責】
久保山 茂樹
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。