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【40】子どもの教育的ニーズ概念をどう捉えるか
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- 子どもの特性、実態把握に関すること
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「我が国の特別な支援を必要とする子どもの教育的ニーズについての考察 -英国の教育制度における「特別な教育的ニーズ」の視点から-(平成20年3月)」より
キーワード: 特別な教育的ニーズ、特別支援教育、教育的ニーズ、教育的な困難さ、障害カテゴリー
【この論文では】
この論文では、特別な支援を必要とする教育的なニーズの概念について、まず歴史的な観点や概念カテゴリーの観点から整理し、その課題について考察しました。この概念は我が国の障害のある子どもの教育が、特殊教育から特別支援教育に制度を変えると同時に導入されたものです。そのため、特別支援教育が始まったばかりの現在は、その在り方について様々に議論がされています。特に「ニーズ」をどう捉えるかには、様々なアプローチの仕方があります。「ニーズ」の語義については、本人の感じる主観的なニーズと専門家などが考える客観的なニーズがあります。以前は専門的見地から考える「ニーズ」に比重が置かれていましたが、近年は民主主義的な観点から、本人の感じる主観的なニーズが特に重要視されるようになってきています。実際の教育現場では、この二つの「ニーズ」は対立する可能性もあるため、どのように調整していくかが今後の課題ということになるでしょう。
また、本稿では、英国の教育制度におけるSpecial Educational Needs「特別な教育的ニーズ」を取り上げ、我が国の「教育的ニーズ」との在り方を比較しました。この二つの概念は、一見すると大変似通っているように思えますが、それぞれの国の持つ文化的な背景にした相違点があります。
英国のSpecial Educational Needs概念の導入は1978年にさかのぼり我が国より30年以上前に始められました。ここでの概念規定は弾力的なもので、「特別な教育的な手だて(special educational provision)」と「学習における困難さ(learning difficulties)」という概念を用いて、 「学習における困難さ」があるならば、 「特別な教育的な手だて」を必要とするほど、その子どもは「Special Educational Needs」を持つと示されています。また、この「Special Educational Needs」を持つ子どもは、「障害のカテゴリーによらない本人の『学習の困難さ』に必要な『特別な教育の手だて』のある子ども」と定義されていて、一人一人の学習の困難さをもとに、その教育的なニーズを考えることを基本としてます。
一方で我が国の特別支援教育は、障害のカテゴリーを基礎においた制度設計がされており、その点において大きな違いがあるといえるでしょう。
しかしながら、障害のカテゴリーの有無については、一概に優劣をつけることはできません。事実、国においても一部障害種の復活が見られているようです。一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方は、その子どもが置かれている状況や子どもの状態によって、本人、保護者、周囲の指導・支援者の全ての人々によって考えられる必要があるということができます。
【論文の中で、最も強調したい点】
ニーズについて、社会福祉分野においてBradshaw1)と都村2)が述べている内容を元に、表のように主観的なニーズと客観的なニーズに整理しています。教育と福祉上の概念は完全に同じとはいえないかもしれませんが、参考にはできるかと思います。ニード分類における主観的なニーズと客観的なニーズ主観的なニーズ 客観的なニーズ felt need normative need xpressed need comparative need minimum standard national
1)Bradshaw, J. : A taxonomy of social need. In McLachlan, G(. Ed.), Problems and progress in medical care, Oxford, UK: Oxford University Press,1972.2)都村敦子:ソーシャル・ニードを把握するいくつかのアプローチについて. 季刊社会保障研究, 11(1),27-40, 1975.
【研究に関する情報】
この研究は、(独)国立特別支援教育総合研究所研究紀要第35巻にまとめました。
【執筆者】
横尾 俊【論文名】
我が国の特別な支援を必要とする子どもの教育的ニーズについての考察 -英国の教育制度における「特別な教育的ニーズ」の視点から-
【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
この論文は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-35/a-35_8.pdf
【本研究紹介シートの文責】
横尾 俊
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。