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【57】漢字書字に困難のある児童生徒への指導に関する研究動向
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- 指導法・支援方法に関すること
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平成25年度 研究紀要 第41巻「漢字書字に困難のある児童生徒への指導に関する研究動向」より
キーワード: 漢字書字、LD(学習障害)、研究動向
【この論文では】
本研究では、わが国における漢字書字に困難を示す児童生徒の実態と、漢字書字を困難にしている要因や指導に関する近年の研究を概観して現状と課題を明らかにし、今後の研究の方向を示すことを目的として行いました。漢字の書字障害に関する複数の研究では、1997年以降の漢字書字に困難を示す児童生徒に関する研究論文を対象にしており、2000年以降の引用された論文数は2000年までと比較して多くありました。
そこで、本研究では1997年から2012年までの漢字書字に困難を示す児童生徒の研究論文を対象とし、実態、漢字書字の困難要因、指導方法を明らかにし、今後の課題を明確にすることを目的としました。CiNii(Citation Information by NII)を用いて、1997年から2012年までの論文検索を行いました。1997年から2012年までに公表された研究論文の検索を行いました。漢字書字に困難を示す対象児童生徒に対する研究を検索するために、①「漢字」「書き」「障害」、②「漢字」「書字」「障害」、③「漢字」「書字」「困難」の3種類の検索のいずれかに該当したもののうち、タイトルに「漢字」を含む研究論文を選択しました。研究論文の選定基準は、対象児童生徒の年齢は学齢期で漢字書字の困難を伴い、それに関する検討が行われたものとしました。WISC-RやWISC-Ⅲの検査結果ではFIQが70以上、あるいは動作性IQと言語性IQのいずれかが85以上のものを対象とし、定型発達の児童生徒の特徴のみの検討を行ったものは除外しました。
また、研究目的に合致するように、①漢字書字の困難の特徴や要因を検討した研究と②指導の効果を検討した研究を対象にしました。①は、個々の事例を諸検査の結果に基づいて漢字書字の困難さを分析した事例研究と、複数の事例を統計的な手法を用いて漢字書字の特徴や困難さの分析を行った研究がありました。②は、個々あるいは複数の事例に対する漢字書字の指導の効果を検討したものでした。【論文の中で、最も強調したい点】
上記の方法で論文検索を行った結果、該当論文数は42編でした。該当論文にみられた対象、漢字書字困難の要因、指導及び、今後の課題は以下の通りでした。1.対象、漢字書字困難の要因及び指導
主な対象は、小学生でLD(学習障害)のある児童でした。対象の多くは、当該学年の漢字書字を習得していませんでした。対象児の在籍する学級のほとんどは、通常の学級でした。中には、漢字とひらがらの両方、漢字とカタカナの両方に強い読み書き障害を示す事例がありました。漢字の誤書字の特徴として、形態誤り、意味誤り、音韻誤り、過不足や微細な誤り、空欄、鏡映、バランスの悪さ、筆順が不正確などがありました。
漢字書字に困難のある児童生徒に対する指導の効果を検討した研究では、WISC-ⅢやK-ABCなどの心理検査の結果に基づいた指導仮説を立て対象児童生徒の実態把握を行い、それを基にした指導方法の検討が行われました。漢字書字に困難のある児童生徒に対して、聴覚記憶、視覚記憶、運動イメージといった優位な認知機能を把握したり、書字への負担を配慮したりして指導につなげていく研究が見られました。また、集団場面を対象とした研究では、通常の学級に在籍する児童に対して、集団場面で活用可能なホームワークや指導場面以外に対象児が自分で取り組むことを想定した漢字書字教材が試みられた研究が行われていました。2.今後の課題
以下の3点が挙げられました。①通常の学級では上記した漢字の誤書字の特徴をもつ児童生徒がどの程度存在して、教師は実態をどのように把握して、指導につなげて、実際の指導を行っているのかを検討すること。②児童生徒の年齢の違い、ひらがな・カタカナ・漢字の読字書字の習得状況の違い、障害種別によって漢字書字の困難要因や指導方法の効果が異なるか否かを検討すること。③実践研究が学校場面や家庭場面で行われ、一人一人のニーズに合わせた教材の活用の工夫とその効果を検討すること。【執筆者】
岡本 邦広【論文名】
漢字書字に困難のある児童生徒への指導に関する研究動向【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
この論文は、研究所webページにて全文掲載されています。
http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/9138/20140331-113146.pdf【本研究紹介シートの文責】
岡本 邦広
本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。