【20】周囲の子どもへの障害理解を図るために

「通常の学級における障害理解のためのツール開発に関する研究(平成18年3月)」より 

 キーワード: 障害理解、通常の学級、学級経営 

 


【PDF版】


【この研究では】
 近年の特別支援教育の流れの中では、個々の子どもに対応し社会全体で子どもに教育的な支援を行っていくという考え方が重要になります。そのためには、子どもにかかわる人々の障害への理解が不可欠となっています。そこで、通常の学級の中で、障害理解を促すための教材(ブックレット)の作成を行いました。

 作成にあたっては、(1)内容への親しみやすさ、(2)ストーリーのわかりやすさ、(3)キャラクターの親しみやすさ、(4)文字の分量、(5)メッセージの伝わりやすさ、(6)言葉遣いの適切さに留意しました。そして、登場するキャラクターの中には、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)のある子どもも含まれています。

 

ブックレット『なにができるかな?なにかできるかな?』に登場するLDの子どもの例

 

【研究をして見えてきたこと】
 障害理解を考える際には、伝える側の子どもの発達段階等を考慮し、内容を吟味する必要があります。障害理解を図るための教材は、(1)障害の知識を深めるもの、(2)障害の擬似体験を行うもの、(3)障害のある人がある場面で感じる気持ちを想像するものなどが挙げられます。
この研究では、主に小学校低学年の子どもにターゲットを置き、障害のある人とない人の差異を強調するのではなく、ブックレットを通して、障害のある人の気持ちを想像する機会を提供するよう構成しました。このように、自分に置き換えながら、その気持ちを共有できる教材が、この年齢段階の子どもに必要ではないかと考えたからです。しかし、このような授業のみで障害理解を促すことは到底できません。こうした取り組みをきっかけとして、長期的な視野で子どもの障害に対する理解について見守る必要があると考えています。

 

【研究に関する情報】
 この研究では、障害理解の教材として用いることのできるブックレット『なにができるかな?なにかできるかな?』(試作版)を作成しました。また、研究の経過については、『通常の学級における障害理解のためのツール開発に関する研究』としてまとめています。ここには、ブックレット作成にいたるまでの検討内容と、作成後に研究協力校で実践した内容について報告しています。ブックレットは、総合的な学習の時間や道徳の中で行う障害理解の授業での活用が可能ですし、研究報告書からは、障害の理解がどのように考えられているのか、教材を作成するために考えるべき点、また、授業を組み立てる上で必要な観点を得ることができます。


【研究組織】
 横尾 俊・新井千賀子・伊藤由美・植木田潤・大崎博史・海津亜希子・齊藤宇開・玉木宗久・渡邉正裕


【研究課題名】
 通常の学級における障害理解のためのツール開発に関する研究(平成17年度)


【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
 こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。
 http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-194.html


【本研究紹介シートの文責】
 横尾 俊・伊藤 由美・海津 亜希子


本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。