【36】ICF及びICF-CYの活用:試みから実践へ

「ICF児童青年期バージョンの教育施策への活用に関する開発的研究(平成20年3月)」より 

 キーワード: ICF(国際生活機能分類)、ICF-CY(ICF児童青年期版(仮))、理解と支援 

 


【PDF版】


【この研究では】
 特別支援教育を進める学校現場において、発達障害のある子どもも含めて、その理解と支援にWHO(世界保健機関)のICFを活用しようとする実践が増え、また、それらの動きを受けて、中央教育審議会の特別支援教育専門部会でICFの活用の必要性について議論されました。

 


図1 ICFの構成要素間の相互作用の図(概念図)

 さて、ICFの具体的な活用の例としては、ICFの構成要素(図1参照)である心身機能・身体構造・活動と参加・環境因子の分類項目を用いて子どもの評価を行った後、その結果と健康状態と個人因子、さらにICFには含まれない本人の主観等を加えて、ICFの概念図(図3)を模した「ICF関連図」を作成し、子どもの実態と課題を整理する取組などが挙げられます。これらの一連の作業は、個別の教育支援計画の中に位置づけられることが多く、あらゆる利用者間の共通言語としての性格を有するICFの特性を生かし、ICFの枠組みで整理された情報を多職種間で共有し、連携のもとで支援につなげる例等が報告されています 。


【研究をして見えてきたこと】
 ICF及びICF-CYは、障害のあるなしにかかわらず、すべての人の健康に関連する生活の状況を表すことを目的としたものです。したがって、発達障害等の診断名にとらわれすぎず、生活の中での課題やニーズ、そしてその背景を考える際に役に立つツールの一つとしての活用が可能であることが見えてきました。そのような特徴に基づくと、次のような実践への活用の可能性があることが分かってきました。(1)具体的な診断名はないが特別な教育的ニーズがあると思われる子どもの理解や支援への活用、(2)発達障害への指導実績のない特別支援学校の教員によるセンター的機能の一環としての小・中学校等の子どもの理解と支援への活用、(3)子どもだけでなく、保護者や教員の理解や支援への活用。 詳細は、本冊子をご覧ください。
 一方で、課題も次のような明らかになってきました。(1)ICF及びICF-CYやその活用についての理解啓発や研修の必要性、(2)活用のためのより具体的な方法論の検討の必要性、(3)より簡便且つ効果的に活用するための電子化ツールの開発の必要性、などがそれにあたります。これらを踏まえ、本研究所では、引き続き、研究を進めています。


【研究組織】
  徳永亜希雄・笹本健・大内 進・西牧謙吾・萩元良二・渡邉正裕
 研究所外の研究協力者、研究パートナーは、以下をご覧ください。

 

【研究課題名】
 ICF児童青年期バージョンの教育施策への活用に関する開発的研究(平成18~19年度)


【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
  こちらの報告書は、研究所webページにて全文掲載されています。

  1. 研究課題「ICF児童青年期バージョンの教育施策への活用に関する開発的研究(平成18~19年度)」の成果報告書はこちらをご覧ください。
    http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-228_all.pdf
  2. ICF日本語訳についての情報はこちらをご覧ください。
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html
  3. ICF-CYの日本語訳についての情報はこちらです。
    http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#toukei
  4. ICFーCYのより具体的な活用の方法論を検討している、本研究所の研究課題「特別支援教育におけるICF-CYの活用に関する実際的研究」についてはこちらをご覧ください。
    http://www.nise.go.jp/blog/2005/03/post_59.html
  5. 活用ための研修の在り方に研究している、科学研究費補助金「特別支援教育における国際生活機能分類児童青年期版活用のための研修パッケージ開発」についてはこちらをご覧ください。
    http://www.nise.go.jp/blog/2008/05/post_819.html


【本研究紹介シートの文責】
  徳永亜希雄

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。