【48】障害のある子どもへの一貫した支援システム構築のために

平成22年度専門研究A「障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究-早期から社会参加に至る発達障害支援の確立と検証-」より 

 キーワード:発達障害、総合的支援、一貫した支援、グランドデザイン 

 


【PDF版】


【この研究では】 
 発達障害のある人たちへの支援は,できるだけ早い時期から始まって大人として社会参加をする時まで,生涯にわたる支援が一貫性と継続性をもって総合的に行われることが必要です。そして、その支援は発達障害のある人たち一人ひとりの特性を踏まえた適切なものである必要もあります。このような支援が行われることで、発達障害のある人たちが自分の持っている可能性を最大限に発揮し、できうる限りの自立して充実した生活を送ることができるようになります。このことは社会にとっても負担が少なくなり、さらに全ての人たちが共生する喜びを感じることができる、ほんとうに豊かな社会を作ることができるようになると考えられます。
 このような視点から、当研究所では平成18〜19年度に発達障害のある子どもの早期支援の在り方に中心とした研究を行いました。この研究から、一貫性と継続性を持つ総合的な支援の在り方として「発達障害支援グランドデザインVer.1」を提唱しました。さらに平成20〜21年度には後期中等教育における支援の在り方について研究を行いました。
 本研究では,これらの研究成果を踏まえ,発達障害のある子どもへの一貫した支援の在り方をより詳細に検討しました。この研究成果として,先の発達障害支援グランドデザインを改訂し「発達障害支援グランドデザインVer.2」としてまとめました。


【研究をして見えてきたこと】 
 実際に先進的な支援を試行している地域の実地調査等とそれを実行している関係者等による研究協議会による検討を通し、総合的支援の実現に向けた主要なことがらとして以下のようなことがあげられました。
1.先進的事例を活用した支援施策の実施
  義務教育段階における特別支援教育が一定の発展をしている中で,幼稚園・保育所と後期中等教育における発達障害等のある子どもへの支援の具現化が課題となっています。これに対しては,文部科学省のモデル事業や当研究所の研究の実地調査地域・学校の先進的な取組が実際的な情報が蓄積されてきています。これらの情報を参考にすれば,全国各地で効果的な支援体制を構築できると考えられ,これらの情報が広く伝達され活用されることで支援体制充実の進展が期待できます。
2.関係部局等における連携 
  発達障害等のある子どもにおいても関係部局の連携は重要であり,発達障害者支援法にも明記されています。しかし,現在でも連携を進めるためにはなお一層の努力や工夫が必要な段階にあり,国は固より地方自治体において首長のリーダーシップを含めた対応が望まれています。教育についてみても,生徒指導関連施策との連携が重要と考えられ,また,幼稚園・保育所や後期中等教育機関に多い私立学校では,発達障害のある子どもの支援について,研修や相談支援を含めて必ずしも十分な体制がとられていない場合があり,教育委員会と首長部局との連携が一層求められます。
3.社会基盤の充実推進
 発達障害等のある子どもへの総合的な支援の充実のためには,その基となる社会基盤の充実が欠かせません。障害者の権利に関する条約の批准を見通した教育及び就労における合理的配慮の実現,国民全体への発達障害とその支援に関する啓発活動が重要な課題となっています。
  上記のこと等を踏まえ,発達障害等のある子ども・人への一貫した総合的な支援の実現を目指す「発達障害支援グランドデザイン」を改訂しVer.2としました。


【研究に関する情報】 
発達障害支援グランドデザイン Ver.2
 
1.統括・調整
  責任ある組織のもとに,一貫性のある効率的で利便性の高い行政サービスが,一人一人のニーズに応じて提供されるために
2.就学前の発見と支援
  保護者が安心できる,子どもの発達段階に応じた適切な支援を受け,成長を促すことができるために
3.就学後の発見と支援
  早期の支援を生かし,学校において適切な支援が行われ,社会的自立ができるために
4.教育環境整備
  個々のニーズに応じた教育的支援を可能にし,子どもたちが安心して,お互いを支え合う学   校生活を送ることができるために
5.切れ目のない連携
  生涯にわたり一貫性のある支援をいつでもどこでも受けることができるために
6.保護者・家庭支援
  保護者の思いや願いに寄り添い,安心して子育てができるように
7.社会基盤の充実
  発達障害を理解し,社会全体で支え,共にいきるために 


発達障害グランドデザインVer.2における7つの項目について,相互の関係等を模式図で示した。

 

【研究組織】
 渥美 義賢(研究代表者)・笹森 洋樹(研究副代表)・梅田 真理(研究副代表)・
 伊藤 由美・大城 政之・海津亜希子・久保山茂樹・小林 倫代・齊藤由美子・
 澤田 真弓・玉木 宗久・藤井 茂樹・棟方 哲弥・柳澤亜希子・涌井  恵


【研究課題名】 
専門研究A「障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究
-早期から社会参加に至る発達障害支援の確立と検証-」(平成22年度)

 

【もっと詳しくお知りになりたい場合は】

  こちらの報告書は,研究所webページにて全文掲載されています。
  http://www.nise.go.jp/cms/7,5218,32,142.html


【本研究紹介シートの文責】 

  渥美義賢

 

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。