乳幼児期段階

乳幼児期段階

【50】発達障害のある子どもの学校教育段階における支援の在り方とは

乳幼児期段階
小学校段階
中学校段階
後期中等教育段階以降
カテゴリ
指導法・支援方法に関すること

平成22-23年度重点推進研究「発達障害のある子どもへの学校教育における支援の在りに関する実際的研究」より 

 キーワード:発達障害、学校教育段階、学級サポートプラン、支援の連続性 

 


【PDF版】


【この研究では】
 発達障害のある人たちは、その基本症状を生涯にわたり持ち続けますが、乳幼児期から成人期まで、ライフステージにおける状態像は変容していきます。学校教育においても、長期的な展望を持ち、年齢や発達段階に応じた支援を工夫するとともに、支援の連続性を考えていく必要があります。特に幼稚園、高等学校については、小学校、中学校とは異なる教育体制に即した支援の在り方を検討することが重要になります。
発達障害のある子どもが抱える学習上の課題については、個人の障害特性によるものと、学習環境によるものの両面から考える必要があります。本研究は、これまでの研究により開発した支援ツールである学級サポートプランについて、小・中学校における有効性の検証を行うとともに、幼稚園から高等学校に至る学校教育段階応じた支援の在り方について、支援の連続性という視点から検討しました。学級サポートプランは、発達障害のある子どもの学習上の特徴と学級全体の学習上の特徴から、わかりやすい授業への改善を行うため、教師自身がチェック、アセスメントを行い、負担感なく支援を行うことができる支援ツールです。
本研究では、学級サポートプランの活用が、学級全体へのわかりやすい授業の改善や支援の工夫につながること、発達障害のある子どもにとっても教育的な効果があることの有効性について検証を行うこと、そして、支援の連続性の視点から、幼稚園から高等学校に至る学校教育段階に応じた発達障害のある子どもへの教育的支援の在り方について、学校及び地域の実践を通して検討することを目的としています。

 

【研究をして見えてきたこと】
 学級サポートプランは、小学校、中学校における分かりやすい授業の展開や教材の工夫を促し、教師自身の授業の展開や教材の工夫を促し、教師自身の授業の振り返りから授業改善をすすめていく上での有効な支援ツールであることが、研究協力による実践を通して検証することができました。児童生徒の視点に立った授業づくりを考えるための手がかりとなる支援ツールと考えることができます。しかし、そこには児童生徒の実態に応じて、教師自身が支援を工夫してみようという姿勢が重要であることもわかりました。
発達障害のある子どもが、それぞれの学校教育段階における課題に対する自己解決能力を身につけるためには、周囲からの支援が必要です。学校教育段階に応じた支援は、自己解決能力を育む個への支援と、安心できる生活環境の保障となる集団への支援の両面から考えることが重要となります。特に発達障害は、障害特性に気づかれにくいところがあることから、支援者間の共通理解は不可欠であると考えられます。
学級サポートプランのようなツールは、幼稚園、高等学校においても共通理解に基づいた支援という点で有効性は高いと思われますが、幼稚園や高等学校の教育の目的に合わせたデザインの検討が必要です。
基本的な障害特性は生涯にわたり持ち続ける発達障害の子どもたちへの支援が、学校教育段階を通して連続していくためには①関係者が生涯、という長い期間を想定し、子どもの発達段階を踏まえた支援を考えること、②個々の障害特性に応じた支援の目的や意味を、学校間を超えて共通理解することが重要であると考えられます。

 

【研究に関する情報】
本研究では、研究協力機関における実践を通し、以下の5つの研究を行いました。
<研究1> 幼稚園における支援に関する研究
・特別な教育的ニーズのある幼児と学級全体への支援の検討
・幼稚園と小学校との支援の連続性の検討
<研究2> 小学校における支援に関する研究
・学級サポートプランの活用とその有効性についての検証
・個への支援と集団への支援、担任の活用から学校全体への活用
<研究3> 中学校における支援に関する研究
・学級サポートプランの活用とその有効性についての検証
・発達障害のある子どもへのテスト・アコモデーションの検討
<研究4> 高等学校における支援に関する研究
・気になる生徒への気づきと支援に関する教師の意識調査
・高等学校における支援の現状と課題の整理
<研究5> 地域における支援のつながりに関する研究
・地域における支援体制、学校間の支援のつながりの在り方の検討(地域事例の取組を参考に)

 

【研究組織】
(研究代表者) 笹森洋樹(研究分担者) 梅田真理・久保山茂樹・小林倫代・小松幸恵・
廣瀬由美子・海津亜希子・玉木宗久・伊藤由美・涌井恵・柘植雅義・渥美義賢・大城政之

 

【研究課題名】
発達障害のある子どもへの学校教育における支援の在り方に関する実際的研究
- 幼児教育から後期中等教育への支援の連続性-(平成22年度~23年度)

 

【もっと詳しくお知りになりたい場合は】

  こちらの報告書は,研究所webページにて全文掲載されています。
 http://www.nise.go.jp/cms/8,127,52,273.html

 

【本研究紹介シートの文責】

笹森洋樹

 

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。