小学校段階

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【23】慢性疾患、心身症、情緒及び行動の障害を伴う不登校の経験のある子どもの教育的支援

段階
小学校段階
中学校段階
後期中等教育段階以降
カテゴリ
子どもの特性、実態把握に関すること
指導法・支援方法に関すること

「慢性疾患児(心身症や不登校を含む)の自己管理支援のための教育的対応に関する研究(平成18年3月)」より

 キーワード: 慢性疾患児、自己管理支援、心身症、情緒及び行動の障害、不登校 

 


【PDF版】


【この研究では】
 心身症や不登校も含む慢性疾患児に対する自己管理支援のための教育的対応の在り方について、心理的、社会的、身体的に適応するために必要なセルフケア能力の育成の観点から検討するとともに、自己管理支援のためのガイドブック等を作成しました。下記には、腎疾患、インシュリン依存性糖尿病( I 型糖尿病)のガイドライン(暫定版)の表紙を紹介しています。これも、研究所HPよりダウンロード可能です。
 慢性疾患とは、急性疾患に比べて、症状が急激・重篤ではないものの、長期間の経過をたどる疾患の総称です。子どもの慢性疾患としては、悪性新生物、慢性腎疾患、ぜんそく、慢性心疾患、内分泌疾患、膠原病、糖尿病、先天性代謝異常、血友病等血液疾患、神経・筋疾患などがありますが、当然、疾患や病状によって、身体的な健康、精神的な健康の維持、増進のための対応は異なります。しかし、学校教育としては、どの子どもにも生活の質の維持、向上を図ることが共通した重要な課題となります。この課題解決のためには、特に子ども自身による日常生活の自己管理ということが不可欠です。学校教育においては、子どもがよりよく自己管理をおこなうことができるように、子どもの発達段階に合わせて適切に支援する取組を積極的に行うことが求められます。

 


【研究をして見えてきたこと】
 健康な子どもも、 障害のある子どもも、病気になります。発達障害のある子どもが、学校に不適応になるのと同じように、入院中に、うまく治療が受けられないことがあります。不登校を視野に入れた対応は、慢性疾患、心身症、情緒及び行動の障害を伴う不登校の経験のある子どもの教育的支援に関するガイドブックに詳しく書かれています。また、研究報告書には、特別支援学校の養護教諭が、子どもの障害特性をとらえて、健康管理を行った事例が載っています。そこに取り上げられている事例は、いずれも「目から鱗がとれる」ような実践事例です。是非、参考にしてください。

 

【研究に関する情報】
 慢性疾患、心身症、情緒及び行動の障害を伴う不登校の経験のある子どもの教育的支援に関するガイドブックの内容について、少し詳しく紹介します。この研究は、従来特別支援教育の中でも取り上げてこなかった「不登校」をテーマに掲げています。病弱教育では、慢性疾患があり、不登校を経験して病弱養護学校に転学する子どもが多く、この分野は、以前から大きなテーマの一つでした。この内容の中で、大きな特徴の一つは、不登校児童生徒にみられる情緒及び行動の障害に、不登校の多軸診断システムを取り入れた点です。心の問題は、外からはうかがい知ることが出来ません。そこで、不登校現象の背後にある背景こころの問題を見落とさず(第1軸)、発達障害の有無も加味して(第2軸)、不登校出現様式による下位分類の評価(第3軸)、不登校の経過に関する評価(第4軸)、周りからの支援の有無等の環境の評価(第5軸)を行う多軸評価システムに基づく不登校児の支援方法を提言しています。

 また、従来から病弱教育でノウハウの積み上げがある慢性疾患の子どもの不登校、それを予防する配慮についても言及しています。

 少し学術的にはなりますが、子どもの情緒及び行動の問題の評価についてまとめています。初めてこの分野を勉強される教員には最適な内容です。

 学校現場の対応の実際について、教育相談、保健室の役割、義務教育終了後の進路について詳しく解説しています。不登校を主訴とした教育相談の実際では、心理分析的な視点から、アセスメントの目的、視点、支援の基本姿勢、カウンセリングの実際について述べています。

 不登校にならないための学校づくりと義務教育終了後の進路という章では、養護教諭と保健室経営に焦点を当てて解説を加えました。不登校を経験した生徒の義務教育終了後の進路については、通信制課程(単位制)高校の利用に仕方に触れています。

 最後に、病弱養護学校や適応指導教室、巡回指導等の様々な取組の実際ということで、6事例を取り上げました。それぞれ、参考になる事例です。

 慢性疾患、心身症、情緒及び行動の障害を伴う不登校の経験のある子どもの教育的支援に関するガイドブックは、とても良くできた内容です。是非、下記URLよりダウンロードしてお読み頂ければ幸いです。

 

 

【研究組織】
  武田鉄郎・滝川国芳・西牧謙吾・大崎博史・植木田潤

 

【研究課題名】
 課題別研究「慢性疾患児(心身症や不登校も含む)の自己管理支援のための教育的対応に関する研究」 平成16~18年度)


【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
 これらの、報告書は、いずれも研究所webページにて全文掲載されています。


【本研究紹介シートの文責】
  西牧謙吾

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。