後期中等教育段階以降

後期中等教育段階以降

【46】発達障害のある子どもの高等学校等における支援のために

段階
後期中等教育段階以降
カテゴリ
子どもの特性、実態把握に関すること
指導法・支援方法に関すること
支援体制に関すること
理解啓発等に関すること

平成22年度 専門研究A報告書
「障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究 ~発達障害を中心として~」より 

 キーワード:発達障害、後期中等教育、高等学校、支援 

 


【PDF版】


【この研究では】
 発達障害のある子どもの支援は,できるだけ早期から社会参加に至るまで,一人ひとりの特性を踏まえた支援を,発達段階に合わせつつ一貫性と継続性をもって総合的に行っていくことが必要です。本研究では、後期中等教育段階における支援体制を充実されるためにはどのような支援体制が必要とされるのか、それはどのように実現されるのかについての研究を行いました。 


【研究をして見えてきたこと】
 研究を進めていく中から、後期中等教育段階における発達障害のある生徒の支援については、小・中学校における支援と共通することもありますが、それとは異なる面も多いことが分かりました。義務教育段階と共通する面と異なる面のあることを十分に踏まえて、発達障害のある生徒の気づきや支援を行っていくことが必要です。
<1.気づきにあたって>
A. 状態像の加齢変化
 発達障害は基本的には障害にわたって継続するものですが、その状態像は加齢に伴って変化します。もっとも典型的な状態像を示すのは小児期で、診断基準や多くのチェックリストはこの時期の状態像を基にして作られています。後期中等教育段階においては、症状自体は軽度化して診断基準を満たさなくなる場合が少なくありません。しかし、生徒の抱えている困難さにはほとんど変わりがないことも先行研究で指摘されています。
B. 二次障害
 後期中等教育段階になると適切な支援がなされていない場合(現時点ではこの場合の方が多い)、二次障害が目立ってきます。二次障害としては不登校や攻撃的な言動、不適切な学習態度等がよくみられます。
C. 適切な気づきのために
 このため、後期中等教育段階にある生徒の実態把握にそのまま用いると、発達障害のある生徒に気づくことができない場合や、多様化している支援のニーズを的確に把握することができない場合が多くなります。
 チェックリスト等の規準を満たさなくても発達障害の傾向がみられる生徒や、不登校や攻撃的な言動がみられる生徒等を含め、「要配慮児」として相応の支援を行うことが必要とされます。

<2.支援にあたって>
 後期中等教育の学校は多様であり、そこに在籍する生徒の実態も多様です。しかしながら、全ての学校が、どの学校にも発達障害もしくは発達障害のある可能性のある生徒が在籍していることを認識し、各学校の特性を踏まえ特性を活かして支援をすることが必要です。
A. 校内支援体制の構築
 状態像の変化や支援ニーズの多様化を踏まえ、生徒指導、教育相談、保健室等と連携し、これらの既存組織と活かした校内支援体制を構築することが、実際に機能する支援体制につながります。
B. 「学び直し」等による教科学習の充実
 発達障害のある生徒は、義務教育段階における学年相当の教科学習が十分に定着していないことが多いので学級編成における工夫や「学び直し」の時間を設ける等により義務教育段階の学習の定着を図ることが重要です。加齢により学習能力は発達していることが多いので、丁寧な工夫された指導により、学習が進展することが多く、このことは生徒の自己評価を高め、学習意欲の向上や行動面の課題の解決につながることも少なくありません。
C. 支援を考慮した教育課程編成
 多様な生徒の存在を考慮して、支援ニーズのある生徒の実態に配慮した学級やコースを編成し、コースによっては障害による困難さを改善・克服するための内容が含まれるような工夫が、先進的な試みを行っている学校において行われており、支援の効果をあげていました。学校設定教科・科目を活用した対人関係の形成等の支援は、まだほとんど行われていませんが、今後は校外の資源を活用しつつ各学校の実態に即して検討し実施されていくことが必要と考えられました。
D. 内部及び外部資源の有効な活用
 特別支援学校の経験者等の、校内において特別支援教育の専門性を持つ教職員の知識・経験を活用することで、各学校における発達障害のある生徒の支援を推進することが可能となります。また、特別支援学校のセンター的機能や専門家チーム、さらには保健・医療・福祉・労働の諸機関との連携、学生等のボランティアの活用等、外部資源の活用も、発達障害のある生徒の支援を推進する糧となります。

 

【研究に関する情報】
 報告書には、先進的に発達障害のある生徒及びその可能性のある生徒の支援を行っている事例があげられています。ここには実際にこれから支援を行っていくための参考になる情報がありますので、ご活用ください。


【研究組織】
 渥美義賢(研究代表者)・伊藤由美・植木田潤・梅田真理・大城政之・海津亜希子・
 久保山茂樹・後上鐵夫・小林倫代・齋藤由美子・笹森洋樹・澤田真弓・玉木宗久・
 藤井茂樹・棟方哲弥・柳沢亜希子・涌井恵


【研究課題名】
  障害のある子どもへの一貫した支援システムに関する研究?発達障害を中心として(平成20~21年度)

 

【もっと詳しくお知りになりたい場合は】

 この論文は、研究所webページにて全文掲載されています。
 http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_c/c-81.pdf


【本研究紹介シートの文責】

  研究代表者 渥美義賢

 

本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。