令和2年度発達障害教育実践セミナー
概要報告
2021年(令和3年)1月28日(木)9:30~12:00に「令和2年度発達障害教育実践セミナー」を開催しました。今年度は、新型コロナウィルス感染症予防のため、Zoomウェビナ―(YouTube同時配信)によるオンラインセミナーとして実施しました。
昨年度と同様、本年度のセミナーも、文部科学省と厚生労働省によりまとめられた「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト報告(平成30年)」を踏まえ、現在取組んでいる「特別支援教育担当教員の資質向上に向けた人材育成プロジェクト(プロジェクト)」の成果を、全国の教育委員会及び教育センターの研修担当指導主事と共有し、各地域における発達障害教育の実践的指導力の向上を推進する今後の研修の在り方について検討することを目的としました。
「研修コアカリキュラムの活用方法―教育と福祉の連携のための研修を中心に―」をテーマとし、プロジェクトに参加している6つの自治体(秋田県、福井県、山口県、徳島県、宮崎県、川崎市)の取組の紹介(表1、参考資料②、③)や、ディスカッション等を行いました。
パネルディスカッションでは、各自治体の実践における特色や工夫点、課題について議論を交わしました。また、質疑応答の時間では、講師からの質問の他、ウェビナ―のQ&A機能を使って参加者からの質問も取りあげ、さまざまな情報交換を行いました。セミナーの最後には、講師の国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センター・センター長 西牧 謙吾 氏、及び文部科学省・特別支援教育課・特別支援教育調査官 加藤 典子 氏より、それぞれ福祉、教育の異なる立場から、今後に向けて大切にしたいポイントなどを分かりやすくお話いただきました。
全国各地の自治体の教育委員会、及び教育センターから96機関の応募(機関定数70~100)がありました。また、当日は最大119のアクセスがあり、多くの指導主事の皆様にご参加をいただきました。
アンケートでは、すべての参加者から「参考になった」という回答を示していただきました。また、参考になった理由としては、「それぞれがコアカリキュラムを用いながら創意工夫をしてあることがわかり、今後の本県研究の大変大きな一助となった」「教職員への福祉への理解促進をどのように進めていくか、研修会での取り上げ方など大変参考になった」「お話の中で福祉分野と学校・教育との違いについての内容が興味深かった」「研修コアカリキュラムに照らしてみると、特別支援教育コーディネーターや特別支援学級・通級の担当者対象の研修講座の内容に偏りがあることに気付いた」「コロナ禍において、他県他市の研修実施方法やカリキュラムを知ることができた」など、さまざまな声をいただくことができました。
表1.セミナーで紹介のあった自治体の取組
秋田県 | 研修コアカリキュラム案を活用し、学校と放課後等デイサービス事業所の連携促進を図るための具体的な方策や、それぞれの立場の現状と課題についての検討を行った。 |
福井県 | 研修コアカリキュラム案と既存の研修の項目を比較することで、過不足を確認し、福祉関係者や大学関係者、市町の教育委員会の担当者と連携しながら、今後の教育センターが実施する研修の内容を見直した。 |
山口県 | 研修コアカリキュラム案の項目や到達指標を活用した取組として、受講者や校種の違いによる研修ニーズの把握や、研修目的の明確化を図った。また、地域で核となる教員が学校支援のための研修会等で活用した。 |
徳島県 | 研修コアカリキュラム案を活用し、発達障害に係る教育と福祉の人材育成を目的とした「地域支えあい隊プロジェクト」を立ち上げ、両分野における支援の共有化、共通言語化を図る取組を展開した。 |
宮崎県 | 研修コアカリキュラム案と既存の研修の項目を比較することで、現在実施している研修の見直しを図った。特に、上級特別支援教育コーディネーター養成研修(地域の核となる教員)に、福祉や医療関係者の参画を充実させた。 |
川崎市 | 通級による指導の担当者の専門性に関する研修コアカリキュラム案をもとに作成した「研修ロードマップ」を活用し、研修の効果を高めるために、担当者同士で支え合い・学び合う研修スタイルの「地域ユニット研修」を実践した。 |
参考資料
② 教育と福祉の「連携・協働」に関する研修コアカリキュラム(案).pdf
③ 通級による指導の担当者の専門性に関する研修コアカリキュラム(案).pdf
パネルディスカッション
〔1〕研修の企画及び評価について(福井県、宮崎県、山口県)
コーディネーター:国立特別支援教育総合研究所 井上 秀和
パ ネ リ ス ト :福井県特別支援教育センター
:宮崎県教育庁特別支援教育課・宮崎県教育研修センター
:山口県教育庁特別支援教育推進室・山口県ふれあい教育センター
助 言:国立特別支援教育総合研究所 笹森 洋樹
〔2〕研修の実践及び評価について(秋田県、徳島県、川崎市)
コーディネーター:国立特別支援教育総合研究所 廣島 慎一
パ ネ リ ス ト :秋田県教育庁特別支援教育課
:徳島県立総合教育センター
:川崎市教育委員会事務局学校教育部指導課・川崎市総合教育センター
助 言:国立特別支援教育総合研究所 笹森 洋樹
〔3〕質疑応答/まとめ(全パネリスト参加)
コーディネーター:国立特別支援教育総合研究所 笹森 洋樹
講 師:西牧 謙吾 (国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報支援センター・センター長)
講 師:加藤 典子 (文部科学省・特別支援教育課・特別支援教育調査官)
写真 Zoomウェビナ―によるオンラインセミナーの様子