令和3年度発達障害教育実践セミナー
実施要項
発達障害教育実践セミナーでは(以下「セミナー」),過去2年間,文部科学省と厚生労働省による「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト報告(平成30年)」を踏まえた本研究の事業「特別支援教育担当教員の資質向上に向けた人材育成プロジェクト(以下『人材育成プロジェクト』)」の自治体の取組などを取り上げてきました。今年度は,この人材育成プロジェクト事業の終期であり,その集大成として,これまで検証してきた「研修コアカリキュラム案」を活用した具体的な取組――特に教育と福祉の合同研修の在り方に焦点をあてた取組――について報告し,事業の総括を行うことを目的としました。
教育と福祉の「連携・協働」に関する研修コアカリキュラム(案).pdf
通級による指導の担当者の専門性に関する研修コアカリキュラム(案).pdf
メインテーマは「発達障害者支援を充実するための教育と福祉の合同研修の在り方の検討」としました。これまでのセミナーでは,参加者対象を,都道府県・指定都市・中核市の教育委員会及び教育センターの研修担当の指導主事に絞ってきましたが,今年度は,事業やメインテーマの趣旨を踏まえ,新たに都道府県・指定都市の福祉行政担当者や発達障害者支援センターの職員など福祉の関係者からも参加を募りました。
午前中は「取組紹介」を行いました。ここでは会場を2つに分け,人材育成プロジェクトに参加している9つの自治体(秋田県,福井県,福井市,滋賀県,山口県,徳島県,宮崎県,宮崎市,川崎市)から,教育と福祉の合同研修に関するそれぞれの取組について報告をしていただき,また,講師の先生から講評をいただきました。各自治体の取組のタイトルは表1のとおりです。
午後は「情報交換会」と「事業の総括と今後の展望」を行いました。
「情報交換会」では会場を4つに分け,それぞれ異なるテーマ(下記参照)を取り上げました。各会場では,参加者参加型で,それぞれの自治体が現在進めている取組や,課題・疑問に感じていることなどについて活発な意見交換が行われました。教育の関係者だけでなく,福祉の関係者の方からも多数の報告をいただき,お互いに新しい気づきや発見がありました。また,それぞれの会場では国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターの職員の方々にご協力をいただき,教育と福祉の連携に関わる最新の情報を提供していただきました。
「事業の総括と今後の展望」では,「研修コアカリキュラム」を協働で作成してきた当研究所 発達障害教育推進センター センター長 笹森 洋樹と,国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター センター長 西牧 謙吾 氏より,それぞれの事業の成果と課題についてまとめていただきました。また,最後に,厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 発達障害施策調整官 田中 尚樹 氏,及び文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 特別支援教育調査官 加藤 典子 氏より,それぞれ福祉,教育の立場から,今後に展望に向けて大切となるポイントなどを分かりやすくご講話いただきました。
全国各地の教育委員会,教育センター,福祉行政担当部,発達障害者支援センターから,全部で110機関の応募(福祉関係機関は全体の半数弱)があり,当日は最大(YouTubeを含む)で約160機関のアクセスがあり,多くの皆様にご参加をいただくことができました。
アンケートでは,回答をいただいた機関の98%以上から,プログラムのいずれの内容についても,「とても参考になった」「やや参考になった」の良い評価をしていただきました。
参考になった理由としては,「他の地域で取り組んでいる内容を知ることができ,大変参考になった」「課題に感じていることが,同様であることを実感しました」「今後,どのように連携していけばよいか,自分の地域でどんなことが可能なのかを考えていきたい」「福祉関係者の方から情報を多く拝聴でき,とても貴重な時間となりました」「教育,福祉,そして,発達障害者支援センターそれぞれの立場での取組を聴けたことがいい機会となった」「新たな支援,気づきをいただきました」「教育と福祉が連携して研修を実施する取組みは,今後当県でも検討していきたい」「学校の教員に対して,具体的な事例を通して,教育と福祉の地域資源の活動について周知を図っていくことの必要性を感じた」などが述べられており,教育と福祉の合同研修の在り方や連携の体制についてさまざまな声をいただくことができました。
概要報告
令和4年(2022年)1月27日(木)9:30~15:30に「令和3年度発達障害教育実践セミナー」をオンラインで開催しました(Zoomミーティング[一部YouTube同時配信])。
取組紹介 9:50―12:00
〔会場A〕宮崎県,滋賀県,福井県・福井市,宮崎市
コーディネーター
井上 秀和
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
報告
① 宮崎県教育研修センター/宮崎県教育庁特別支援教育課
➁ 滋賀県総合教育センター
③ 福井県特別支援教育センター・福井市教育委員会/福井県高校教育課
④ 宮崎市教育委員会
講評
田中 尚樹 氏
(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 発達障害施策調整官)
笹森 洋樹
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター センター長)
〔会場B〕秋田県,徳島県,山口県,川崎市
コーディネーター
廣島 慎一
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
報告
① 秋田県教育庁特別支援教育課
➁ 徳島県立総合教育センター
③ 山口県教育庁特別支援教育推進室/山口県ふれあい教育センター
④ 川崎市教育委員会事務局学校教育部
講評
加藤 典子 氏
(文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 特別支援教育調査官)
西牧 謙吾 氏
(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター センター長)
表1.各自治体の取組
会場 | 自治体 | 取組の概要 |
A | 宮崎県 |
子どもの発達からみた学校・福祉・保護者の連携 |
滋賀県 |
特別支援教育支援体制の構築に向けた関係機関との連携 |
|
福井県 |
教育と福祉の支援者が「連携・協働」するための課題の整理と検討 |
|
宮崎市 |
教育と福祉が「連携・協働」するための課題の整理と検討 |
|
B | 秋田県 |
学校と放課後等デイサービス事業所の連携促進に向けた研修会の取組 |
徳島県 |
家族を支える具体的な仕組み |
|
山口県 |
地域の核となる人材の育成 |
|
川崎市 |
教育と福祉の支援者が「連携・協働」するための課題の整理と検討 |
情報交換会 13:30―14:35
〔会場1〕教育と福祉が連携した家庭への支援
コーディネーター
竹村 洋子
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
〔会場2〕就学前から高等学校段階卒業までの切れ目ない支援
コーディネーター
榎本 容子
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
〔会場3〕地域における関係機関のネットワークづくり
コーディネーター
井上 秀和
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
〔会場4〕小中学校等を対象とした取組
コーディネーター
廣島 慎一
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター)
事業の総括と今後の展望 14:50―15:25
コーディネーター
笹森 洋樹
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター センター長)
〔事業の総括〕
笹森 洋樹
(国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター センター長)
西牧 謙吾 氏
(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター センター長)
〔今後の展望〕
田中 尚樹 氏
(厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 発達障害施策調整官)
加藤 典子 氏
(文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課 特別支援教育調査官)
※写真 Zoomミーティングによるオンラインセミナーの様子
その他:参考
◆ これまでの発達障害教育推進セミナー
令和元年度 https://cpedd.nise.go.jp/about_cpedd/katsudo/seminar/r1
令和2年度 https://cpedd.nise.go.jp/about_cpedd/katsudo/seminar/r2