当研究所の研究

【38】障害乳幼児を養育している保護者を理解するために

段階
乳幼児期段階
カテゴリ
子どもの特性、実態把握に関すること
指導法・支援方法に関すること
支援体制に関すること
理解啓発等に関すること

「障害乳幼児を養育している保護者を理解するための視点(平成20年3月)」より  

 キーワード: 保護者の状況理解、文献研究、ストレス、ソーシャルサポート、障害受容 

 


【PDF版】


 【この研究では】
 障害児の保護者支援をするためには、二つの側面から対応することが必要だと考えています。その一つは、行政が作り上げている地域支援システムという側面です。特に障害が発見されてから、その対応が開始されるまでの乳幼児の保護者に対する支援では、障害に関する情報提供だけでなく、居住地域にどのような機関があり、そこで何をしてくれるのかという先を見通せる助言が大切です。このことは、地域の支援システムが、どれだけ整備されているのかと関係があると思っています。

 そしてもう一つは、相談を担当する者が相談活動の中で保護者と直接関わっていく側面です。担当者は、子どもの実態、子どものかかわり方に関する一般的・具体的な方法、障害に関する情報等について、保護者にタイミングをとらえて伝えていくことが必要です。しかし、実際に保護者と対応していく時には、このタイミングを捉えることが難しいことがあります。


 この論文では、後者で示したような保護者と直接関わっていく側面に焦点をあてました。

 障害のある乳幼児を養育している保護者と直接かかわっていく時に、担当者は、保護者の考え方や保護者の社会的立場を理解して対応することが重要だと考えています。このようなことからこの論文では、担当者が保護者の状況を把握し、保護者を理解するために必要な視点を明らかにすることを目的としました。

 視点を見出す方法としては、文献研究を中心として、筆者の臨床経験を加えました。

 論文の構成として、まず障害児を養育している保護者に対応する担当者が、障害児の保護者の役割をどのようにとらえるのかを明確にしました。次に、障害児を養育している保護者の状況を理解するために重要な要因と考えられる「ストレス」「ソーシャルサポート」「障害受容」の文献をレビューしました。

 ストレス研究をレビューした結果では、障害児自身のこと、母親自身のこと、生活の態度、地域社会に対する態度、配偶者の態度、社会的地位・社会に対する態度、家族間のダイナミックス、家族外のリソースなどが障害児を養育している保護者に影響を与えているということが明らかになりました。

 ソーシャルサポート研究をレビューした結果では、インフォーマルサポート源、ソーシャルサポートの機能面、フォーマルサポートが障害児を養育している保護者に影響を与えているということが明らかになりました。

 障害受容の研究をレビューした結果では、子どもの障害の特性、障害告知からの時間的推移、子どもを取り巻く環境などが障害児を養育している保護者に影響を与えているということが明らかになりました。

 これらの文献研究を踏まえ、さらに筆者の臨床経験を加味して、保護者を理解する視点として、(1)保護者自身のこと、(2)子ども自身のこと、(3)親子の関係、(4)親子を取り巻く環境(家族)、(5)親子を取り巻く環境(地域)の5つの観点から保護者を理解する28の視点を明らかにしました。


【研究をして見えてきたこと】
 この論文で示した保護者の状況を理解する視点を下の表に示しました。この表を「保護者の状況理解リスト」としました。

 

保護者の状況理解リスト

 

【研究に関する情報】
 この研究は、(独)国立特別支援教育総合研究所研究紀要第35巻にまとめました。


【執筆者】
 小林倫代


【論文名】
 障害乳幼児を養育している保護者を理解するための視点


【もっと詳しくお知りになりたい場合は】
 こちらの論文は、研究所webページにて全文掲載されています。
  http://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_a/a-35/a-35_5.pdf


【本研究紹介シートの文責】
 小林倫代


本研究紹介シートは、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で行った研究を基に作成しています。